ほかにも、1つのエピソードごとに背景の色を変えたりとか、読者の方が迷わずに読めるよう、編集さんと一緒に一生懸命考えました。マンガのユニバーサルデザインですね。私のやりたいことをやらせてもらった感じです。これなら海外の人も、ちっちゃい子でも読めるかなと思って。

――ネームがないマンガというととり・みき先生の『遠くへいきたい』などの先行作品がありますが、参考にしたものはありましたか?

たき 姉が読んでいた英字新聞に『Peanuts』が載っていたんですけど、それを子どものころに読んでいました。ネームはありますが、なにしろ子どもだった私には英語は読めませんから、キャラクターたちの絵だけを見て理解しようとしていたんですね。ああいう4コマをイメージしていました。

――実際にお描きになってみて、どういったところで困ったりとか工夫したりしましたか?

たき どうしても文字を使わなきゃいけないとこがたまに出てくるんですよ。たとえば動物病院に行くシーンで、そこがなんなのかわかるようにしなきゃいけないから、“animal clinic”と描いたりとか、病院のマークを入れたりとか。あとは猫が日本語でなにか喋ったみたいに鳴いた! といったネタは、ちょっと使えないですよね。

 

――オノマトペも使えませんし、漫画的なあの記号みたいなものも最小限に抑えられています。

たき そうですね、猫の鳴き声は「♪」で表現したり、あとは「!」と「?」ぐらいまでしか使ってないですかね。猫は喋らないけど、猫が言いたいことはわかるじゃないですか。ドアの前で待ってたら開けて欲しいのかなとか、エサ皿の前でこっちを見ていたらごはん欲しいんだなとか。

 だからその猫をそのまま描くようにしています。題材的にもサイレントマンガとは相性が良かったんだと思います。

「猫ってそのまま描けば、通じるところがあるんですよね」

――椅子や子どもたちにぐてっともたれかかる様子など、猫の重さの表現もすごくかわいいです。猫を描くときに何か心がけていることはありますか?

2021.08.18(水)
文=小田真琴
漫画=たきりょうこ