「2013年11月の『ヴァニティ・フェア』誌のインタビューで、ミアが『ローナンは、(元夫の)フランク・シナトラの子かもしれない』と告白した。それを受けてウディは『もしそうなら、それが何を物語るのか。ミアは嘘つきだ』と。だから性的虐待は、ミアがでっち上げた嘘だってウディは言いたいんです。ローナンのDNA鑑定もされていません。もしシナトラの子だと判明したらこれまでの養育費をウディに請求されてしまうでしょうから。一方、ウディは二度の結婚生活において必ず不倫をしていました。とにかく女にだらしがない。40代になっても何人かのティーンエイジャーと付き合っています。挙げ句の果てに35歳も年下の、自分の恋人の娘と関係を持った。彼には“そういう要素がある”ということも書いておきたかった」
ウディとミア、どちらも天使でもないし、悪魔でもないが、双方の主張には矛盾があるという。その矛盾を本書ではできる限り正確に描く。
「この家族は、ものすごい複雑。どちらが悪いなんて簡単に決められない。性的虐待があったかどうか、その答えを知っているのは当の本人しかいないのです。ほとんどの人は、ことの詳細をあまりよく知らずに意見を言っています。あの家族に何が起こったのか。この本を読んで、ウディの映画を見るかどうか判断していただきたいですね」
さるわたりゆき/1966年生まれ、兵庫県出身。上智大学文学部卒業。女性誌編集者を経て92年渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、ハリウッド事情のコラムを新聞や雑誌、WEBサイトに執筆している。
2021.06.26(土)
文=「週刊文春」編集部