「真面目さの角も取れて、だんだん今は幼児返りしている(笑)」

――“ひねくれている”という言い方をなさっていますが。そういう自分に気づいたのはいつ?

 15歳ぐらいですかね。この間実家に帰ったときに、その頃の写真が出てきたんですけど、すごいヤバい目をしていました(笑)。自分でビックリしたんです。

 「こいつには話しかけたくねーな」っていう目をしていて、「わ、ここまで心が荒んでたんだ」と思いました。

 小学6年生ぐらいまでは、今みたいな、フランクなノリで生きていたんです。それが思春期を経て、なんか色々抱え込んじゃったのか。ひねくれましたね〜(笑)。

 そこから仕事のない時代を経て、真面目さの角も取れて、だんだん今は幼児返りしているんですけど(笑)。

――演劇人は、いい意味でひねくれている人が多いですよね。古田新太さんもいいひねくれ感がある人ですが。気が合う方だとお聞きしました。

 若い頃から、お世話になっている先輩です。11年にKAAT神奈川芸術劇場で上演された「ロッキー・ホラー・ショー」っていうミュージカルを一緒にやらせていただいて。

 当時は毎日のように飯に連れていってもらいました。古田さんはものすごいエンターティナーですよね。

――見た目は全然違うけれど、物事をズラして見る視点や、自分の筋を通しながら、置かれている状況を面白がるところは似ているように思います。

 光栄です。大先輩を捕まえて「そうですね」とは言えないです(笑)。

――山に登れば登るほど先が遠くなっていく中で、「こういうことをやりたい」というアイデアや、「もっとこうありたい」という向上心は生まれていますか?

 うーん、そうですね。この仕事をやっていると、常に潮目があるなってことは感じます。どんなオファーが来るかわからないから、「なるようになるさ」と、常に自分をニュートラルに保ちながら、自分の意見は隠し持っている感じですかね。

 結局、自分の想像の範囲内で考えられることはセルフプロデュースについてなので、そこは、自分の頭の中にいろんな目線があります。

 いうても、人前に出てやることは全て仕事ですし。色々なものを秤にかけながら、僕なりにあざとく生きていきます(笑)。

中村倫也(なかむら・ともや)

1986年生まれ。東京都出身。2005年俳優デビュー。13年『SPINNING KITE』で映画初主演。コメディからシリアスまで硬軟併せ持つ俳優として活躍。14年には初主演舞台「ヒストリーボーイズ」で第22回読売演劇大賞優秀男優賞を受賞。18年NHK連続テレビ小説「半分、青い。」の朝井正人役で一躍注目され、19年、「凪のお暇」のゴン役で人気を不動のものに。同年、実写版『アラジン』の吹き替えを担当、NHK紅白歌合戦でも美声を披露した。『騙し絵の牙』が公開中。

映画『ファーストラヴ』

女子大生による父親殺害事件。公認心理師の由紀(北川景子)は、事件の取材を依頼され、容疑者・環菜(芳根京子)の心のうちを知るため、彼女と面会を重ねる。事件を担当する弁護士・迦葉(中村倫也)は、由紀の夫・我聞(窪塚洋介)の弟で、由紀と迦葉は大学時代の同窓生だった。環菜と向き合うことで、由紀や迦葉は今まで蓋をしていた自身の過去と向き合うことになる。過去に傷を負った人々はどのように前を向いて進んでいくのか。人が最初に受けるべき愛を描き、見る側の「愛された記憶」を刺激するサスペンス・ミステリー。島本理生の直木賞受賞作、完全映画化。

監督:堤 幸彦
脚本:浅野妙子
原作:島本理生『ファーストラヴ』(文春文庫)
出演:北川景子、中村倫也、芳根京子、木村佳乃、窪塚洋介ほか
https://firstlove-movie.jp/

2021.05.04(火)
文=菊地陽子
撮影=榎本麻美
スタイリスト=戸倉祥仁(holy.)
ヘアメイク=Emiy