余談ですが、最初は予算も少なかったため当初は制作のシンエイ動画だけで宣伝をやっていたんです。けれど、今の宣伝プロデュースに付いてくれているメンバーが、「この作品だったらぜひ力になりたいです!」と名乗り出てくれたんですよね。そのほか、毎日寝不足で頑張ってくれている商品化や海外担当のメンバーなど、作品に惚れ込んで集まってくれたスタッフのおかげで、今みなさんに『モルカー』の様々な情報をお伝えできているんです。
ダークな世界観を持つ20代の鬼才、見里朝希監督との出会い
――『モルカー』の生みの親である見里朝希監督は1992年生まれでまだ20代後半ですが、杉山さんとはどのような経緯で知り合ったんでしょうか?
杉山 見里監督と出会ったのは2年前ぐらいですね。弊社社長の梅澤が知人から「すごくおもしろくて優秀なクリエーターがいるから紹介したい」と言われて一緒に会ったのが見里監督だったんです。そのときに資料としていくつか監督が手がけてきた作品を見せてもらったんですが、そのなかのひとつの『マイリトルゴート』という作品に驚かされたんですよね。
――『マイリトルゴート』は、見里監督が在籍していた東京藝術大学大学院の修了制作作品で、「パリ国際ファンタスティック映画祭」グランプリなど、国内外で多数の賞を受賞された作品ですね。オオカミに食べられた子ヤギたちを腹から救い出した母ヤギと、森をさまよう少年らが織りなす、残酷で恐ろしくも、どこか美しい寓意に満ちたダークファンタジー。可愛らしい世界観の『モルカー』とダークな世界観の『マイリトルゴート』とのギャップに、ファンたちは良い意味で動揺し、大きな話題になっていました。
杉山 『マイリトルゴート』は、『モルカー』しか知らなかった人にとっては衝撃でしょうね。僕が初めて見たときはその作り込まれたダークな世界観と演出、なにより緻密極まる羊毛フェルトのストップモーションの技術に心を撃ち抜かれました。それですぐに梅澤と一緒に見里監督に「一緒に何かやりたいね。羊毛フェルトアニメでアイデアを持って来てください」と伝えたんです。そういった経緯で監督からいくつかの企画が挙がってきまして、そのなかのひとつが『モルカー』だったんですよ。
2021.03.03(水)
文=A4studio