盆栽は奥行きが大事、3Dアートとしての魅力が満載

 上の写真の作品は、荒々しい流木が主役となり、こんもりとしたシンパク(ヒノキ科)の緑が絡み、神秘の森のような景色に。

 「盆栽は奥行きが大事。流木の奥に緑が顔を覗かせるなど、3Dアートとしての魅力が散りばめられている」と教えてくれた。

 細部まで目を凝らすと、苔の風合いや緑のグラデーションなどが美しく、小さき世界を冒険しているような高揚感に浸れる。

 そして、上部の圧倒的なボリュームを華奢な柱が支えるギリギリのバランスにひやりとさせられるのも、また魅力だ。

 西洋の庭に飾られていそうな左側の作品は、懸崖(けんがい:茎や枝が鉢より下に垂れ下がるように作った木)という盆栽の樹形を用いたもの。

 ただし、サンザシのような雑木を使うのは創作盆栽の場合は稀で、季節になると花や実をつけ、表情が変わる楽しさが込められている。

 彼が手がけるどの作品にも言えることだが、パフォーマンスで出来上がった後がスタート。

 盆栽は長い年月をかけて育んでいくもので、常に観察し手入れをしながら変化していく時間が、豊かさをもたらしてくれる。

 自然と向き合うという点で共通している「庭」とのつながりは、平尾氏の出発点でもあった。

 盆栽の世界に入るきっかけとなったのが、大学時代に訪れた京都・東福寺の方丈「八相の庭」(現・本坊庭園)。

 「ちょうど進路に悩んでいた時期で、庭に入った瞬間、不安や迷いを消し去る清らかさに衝撃を受けました。

 なにより庭園を手がけた重森三玲の遺志を受け継ぎ、今も輝きを放つ庭の姿に心打たれた。

 自分も日本文化を継承する仕事に就こうと決意が固まりました」

 東福寺本坊庭園、無鄰庵、清泰山 西善寺。平尾氏の創作の原点となった「庭」はどれも五感を奮わす日本文化の極北ともいえる。

 故きを温ねて新しきを知る。まさにその言葉通りの“創造”が平尾氏の盆栽づくりを突き動かしている。

平尾成志

盆栽師。1981年徳島県生まれ。2003年に埼玉県の盆栽園、蔓青園に入門。修業の後、海外で活動し'13年に文化庁の文化交流使として世界11カ国を回る。’16年に成勝園を開園。著書に『異端の盆栽師 平尾成志の世界』がある。

Feature

平尾成志・盆栽の小宇宙
その背後にある創造の「庭」

Edit & Text=Natsuko Umezaki

この記事の掲載号

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