人々が恋焦がれる自然の豊かさを、敷地内に再現したのが「庭」だとすれば、より凝縮させたのが「盆栽」。

 そこで“不安定な美しさ”を突き詰める気鋭の盆栽師・平尾成志が生み出す小宇宙に触れ、彼の創作意欲かき立てる庭を巡ることに。

 その視点越しには、庭の真の顔が浮かび、自然との対話が始まる。


伝統の枠を飛び越えた想像力を掻き立てる姿

 息を呑む、現代アートのような造形美。型破りな盆栽師として道を切り拓く平尾成志氏は、盆栽を海外に広めた先駆者、故加藤三郎に22歳の時に弟子入りをする。

 5年間の修業後、師匠の志を胸に抱き、海外へと活動の場を広げた。

 盆栽の魅力を愛好家だけではなく、一般の人々にも伝えたいという思いから、ヨーロッパのライブハウスやクラブでDJによる音楽を流しながらのパフォーマンスを行い、独自のスタイルを築いていった。

 それはまさしく“盆栽エンタテインメント”。「作る前は出来上がりがどうなるか、自分でも分からない」という。

 選曲、ゲストたちの熱気など、場の雰囲気を感じながら、盆栽用の「ケト土」を台となる皿に入れ、草木を配置し、苔を貼り、スピードと爆発的なエネルギーで作品を生み出す。

 特徴的なのが「不安定さ」だ。土台の皿と中心軸がずれた位置にトップを置くことが多い。

 創作の過程で、ぐらつき倒れやしないか、ギリギリの重心で作られる美に、観る者は心揺さぶられ、引き込まれる。

 自由さは盆栽の基本技術の積み重ねがあってこそ。

 輪郭は3点にポイントをおいた不等辺三角形を意識する、360度どの角度から観ても趣きがあるように、といった盆栽の伝統美を携えながら独自の世界を構築している。

 「盆栽は自然の風景を切り取るというより、作り手の想像で紡がれる抽象的な存在だと思います。

 僕の場合は、山を登っていく道のりを、見たい景色を描きながら進むイメージ」

 このページの作品(どの作品にも名前はあえて付けていない)は樹齢70年のゴヨウマツがいわば山の頂上。

 紅葉したブルーベリーの葉が風でそよぐ低地を歩き、勾配のある山道を抜け、生命力に満ちた大木と出会う物語だ。

Edit & Text=Natsuko Umezaki

この記事の掲載号

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