規模や様式は様々なれどつくり手の思いがつまった庭は、いつの時代も私たちに豊かな喜びをもたらす。
著名な4人の作庭家が語る、自然に対する思いと庭づくりの美学とは。
『植物っていいな』という思いが広がれば嬉しい
●齊藤太一さん[SOLSO]
植物のスペシャリストとして昨今の植物のトレンドを作った立役者・齊藤太一さん。庭に対しては、新たなジャンルが生まれつつあるといい「ただ眺めるだけの庭でなく、庭に目的を作ることで生活がさらに豊かに。
例えばBBQ好きなら、その場で取って食べられる野菜を植えたり、庭で読書をするでもいい。とにかく庭でやりたいことを詰め込めば、庭に出る頻度が増え、植物の観察や手入れする機会も増える」。
目的のある庭といえば、建築家・田根剛さん、料理家・野村友里さんとともに手がけたeatrip soil(1・2)が印象深い。
「循環をテーマに、世界中のハーブを植え、育て、調理され、使い終わったものはコンポストに入れて土に帰す。あの場は、完成ではなくてスタートなんです。
料理家と作庭家も一緒に考えることで何が生まれるか、楽しみながら観察しています」
ライフスタイルに植物を取り入れる提案をし続ける齊藤さんは「自然を保たなければ地球は変わってしまう。
それに気づいてもらうきっかけを提供する意味で庭づくりという手法をとった」という。
「都心の多忙な生活のなかでも花が咲いたり実がなったり、小さな喜びを感じて欲しかった」
そんな思いで10年前に手がけたビオトープ白金台(3)。人気セレクトショップのコラボと、道行く人を思わず引き込む佇まいで、ファッション層の支持を獲得していった。
「目的もなく、ポジティブに過ごせる場所を作りたかった」という複合施設シェアグリーン南青山(4)は空が広く緑が美しく心地よい。
「インドアだけど、軽井沢の別荘に行ったような気持ちの良い空間にしたかった」という玉川髙島屋S・C グランパティオ(5)は、買い物をするという日常のなかで非日常を感じられる佇まい。
「緑がある空間で気持ちよさを体感して、『植物っていいな』という思いが広がれば嬉しいです」
Feature
庭師という美学
Text=Mayumi Amano
Photographs=Taichi Saito, Asami Enomoto