規模や様式は様々なれどつくり手の思いがつまった庭は、いつの時代も私たちに豊かな喜びをもたらす。

 著名な4人の作庭家が語る、自然に対する思いと庭づくりの美学とは。


自然や植物のリズムと寄り添う生き方を大切に

●塚田有一さん[温室]

 「都心でも雑木林のような心地よい空間を作りたい」そう話す、塚田有一さんが手がける庭はまさに意外な場所に突然現れる現代的な雑木林。

 ツリーネスハウス(1〜4)、ナインアワーズ半蔵門(5~7)は、ともに建築家・平田晃久さんとのコラボレート。

 「ツリーネスハウスについては、全体を山に見立てました。平田さんが襞と呼ぶ建築の窪みや裂け目に植物が根を下ろし繁茂し相互に浸透し合う。

 窓から外を眺めれば空が刻々と移ろい、四季のめぐりに取り巻かれていることを、日々の生活で気づかせてくれる。ユニークなのは「道行」。

 襞と襞を結ぶ道を作り、歩いたり佇んだり、浸る時間が用意され、通り抜けることで小さな旅に。

 ナインアワーズ半蔵門はニュアンスの異なる鏡面のグリッドでファサードが構成され、都市の風景を映し自らを消すこともあり、天候や空模様という異界を無機質な街に投げ込む撹拌を促し混ざり合っていく。

 植物はそこにはめ込まれると同時に 鏡の中に、空中にはみ出していく。

 ナインアワーズ(9時間)という旅の休息を、樹々はある種の聖性を持ち見守ってくれる」

 皇居から続く街路樹が立体化したようなサルスベリ、コナラ、ストローブ松などの植栽で、建築家の「植物が浮かぶ」イメージを見事に具現化。

 安全対策を踏まえた施工・管理面の工夫が必要なことはいうまでもないが、庭と建築の在り方は常に更新されているのだと気づかされる。

 その高い感性で、お花の世界でも活躍する塚田さん。四季はもちろん、二十四節気七十二候など、自然や植物のリズムと寄り添う生き方をとても大切にし、それは作庭にも表れる。

「暦や節供を意識し非日常な時間をあえてつくり、去る季節を思い、新たな季節の準備をする。

 植物を育み、香りを楽しみ、時には自分の手で生ける。それぞれの美しい風景をたくさん見つけられれば結構幸せだと思います」

塚田有一(つかだ ゆういち)さん

ガーデンプランナー、フラワーアーティストとして庭のデザインや手入れのほか、生け花や数々のワークショップを行うなど幅広く活躍。日本各地の風土を生かした作庭プロジェクトも進行中。

Feature

庭師という美学

Text=Mayumi Amano
Photographs=Yuichi Tsukada, Asami Enomoto

この記事の掲載号

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