【KEY WORD:3Dプリンタ】
通常の紙に平面的に印刷するプリンターに対して、コンピュータ上でつくった3Dの設計データを元に、樹脂に紫外線などを照射し硬化させていく、熱で溶かした樹脂を少しずつ積み重ねていく、などの方法で立体を造形する機器を指す。製造業、建築、教育、医療の世界で使用されている。
ほしいものは買わずとも簡単に作れる未来が来る!?
ITの世界では今、3Dプリンタが話題をさらっています。プリンタといっても、紙に文字や絵を印刷する機械ではなく、プラスチックなどの材料を成形し、設計図通りに立体物を作ってくれるという機器です。これまでは製造業者が試作品などを作るためのプロ用途が主で、1台数百万円はしていましたが、米国で3Dプリンタが大きなブームになり、量産されて10万円前後でも購入できる程度に価格が落ちてきています。
なぜそれほど盛りあがっているのでしょう。火付け役は米の著名なIT系雑誌『ワイアード』編集長のクリス・アンダーソン。彼のベストセラー『MAKERS-21世紀の産業革命が始まる』で、3Dプリンタのパワーが大きく紹介されたのです。
これまで、ものづくりには大規模工場が必要で、大企業に独占されていました。ところが3Dプリンタの登場で、個人が大企業並みの製造能力を持つ未来が拓けようとしています。設計データもオープンに共有する仕組みがインターネット上で整いつつあり、「こういうかたちのものがほしい」と思えばネットで設計データをダウンロードし、自宅の3Dプリンタで簡単に作れるようになるのではないかと予測されています。
もちろん今すぐ個人がiPhoneのような精密機械を作れるようになるわけではありません。現在の3Dプリンタはまだ原始的で、プラスチックの成形品ぐらいしか製造できませんし、高度なスキルも必要です。
しかしその先には大きな可能性が見えています。世界史の授業で学んだことを思い出してみましょう。歴史を振り返ると、産業革命は家内制手工業から始まり、その後工場制手工業(マニュファクチュア)に取って代わられ、今のような大規模工場へと進化してきました。3Dプリンタのような「個人のものづくり」システムの登場は、産業革命以前の家内制手工業の時代へ逆回転させようとしているようにも見えます。3Dプリンタは、歴史の大きな転回点に立つ機器といえるのかもしれません。
2012.12.07(金)