映画館も黙ってはいない!

 こうやって見ていくと、NetflixやAmazon Prime Video、Hulu、ディズニープラスといった動画配信サービスの動きが活発だ。

 彼らが、劇場公開がかなわなかった作品の受け皿として力を発揮していく現在の流れは、今後の新型コロナウイルスの感染状況によって、ますます拡大していくことになるかもしれない。

 私たちユーザーにとっては、家に居ながらにして新作を観られる機会が増えていくわけだ。

 ただ、同時に、「やはり劇場で観たい」という声も大きい。それに、劇場運営者にとっては、ミニシアターもシネマコンプレックスも関係なく、興行を行っていかなければ衰退してしまう。

 現に、『るろうに剣心 最終章』や『名探偵コナン 緋色の弾丸』といったヒット確実の大作が来年まで公開延期となった影響もあって、興行収入は過去最低の状況に。

 現在は劇場が稼働しているとはいえ、「席数を約半分に減らす」「消毒や検温などのオペレーションが増えるため、1日の上映回数を減らす」といった措置により、映画業界が置かれた立場は、依然として厳しい。

 そんななか立ち上がったのが、日本映画製作者連盟・全国興行生活衛生同業組合連合会・外国映画輸入配給協会・MPAからなる「映画館に行こう!」実行委員会だ。

 「映画館に行こう! キャンペーン2020」と銘打ち、役所広司をアンバサダーに迎え、映画館の感染防止対策や、映画業界陣のメッセージを広く発信していくという。

 役所は、公式サイトで「大劇場とミニシアターと、すべての映画館が力をあわせ、この苦難を乗り越えて存在し続けることが日本映画の活性には欠かせません。

 映画館に入り予告編が始まって、あの大きな画面と音に触れたとき、ここまで足を運んでよかったと毎回必ず思います。映画館で観る映画には不思議な力があると私は信じています」と熱い想いを語っている。

 また、映画製作者も新たな動きを見せている。コロナ禍により、多くの映画監督が「企画が飛んだ」状態になってしまったなかで、『22年目の告白 私が殺人犯です』や『SR サイタマノラッパー』の入江悠監督は、自主映画の製作を発表。『シュシュシュの娘』のタイトルで、自らTwitterなどを駆使し、出演者を募った。

 『新聞記者』の藤井道人監督が所属するディレクター集団「BABEL LABEL」は、設立10周年を記念し、プロデューサーと監督の公募を発表。この苦難の時期に、あえて力強く攻める姿勢の表明ともいえ、今後の動向が気になるところだ。

 発信者と受信者の双方が、新たな動きを見せている昨今。興味深い動きを見せているのが「ドライブインシアター」という鑑賞スタイルだ。

 アメリカでは一時期、ドライブインシアター以外は全閉鎖状態にまでなったというが、車から出ることのないドライブインシアターは確かに、ソーシャルディスタンスを保ちながら映画を鑑賞できる機会といえる。

 日本では、6月にドライブインシアター実現プロジェクト「Drive in Theater 2020」が開催され、東京タワーの駐車場という絶好のロケーションで、人気映画『スパイダーマン:スパイダーバース』が上映されたという。

 こちらも、新たなビジネスモデルとして注目していきたいところ。

 新型コロナウイルスは、「映画館で気軽に映画を観る」という機会を奪ってしまった。都内では日々新規感染者が増加しており、今後も不安定な状態は続きそう。

 ただそれでも、「不幸中の幸い」といえるのは、このような状況下で逆説的に「映画の力」を確認できていることにあるのかもしれない。各動画配信サービスの利用者増は、映画を観たいと願う人々の熱意の表れでもある。

 全国のミニシアターを救うべく設立された「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」に3億円を超える寄付金が集まったことも示しているように、国内の“映画の灯”はまだ消えていない。

 危機的な時期だからこそ、求められているのは人々の心を満たし、救う「映画」という娯楽だ。予断を許さぬ状況ではあるが、映画の底力の見せ所でもある。時代はきっと、今こそ映画を必要としているのだ。

SYO

映画ライター・編集者。映画、ドラマ、アニメからライフスタイルまで幅広く執筆。これまでインタビューした人物は300人以上。CINEMORE、Fan's Voice、映画.com、Real Sound、BRUTUSなどに寄稿。Twitter:@syocinema

2020.07.27(月)
文=SYO