K-POPの歴史において前例がない進歩
グラミーはポップグループ、なかでもボーイズバンドを主要部門にノミネートした例がほとんどない、保守的なアワードだ。だがBTSは、主要部門や音楽ジャンルの部門ではないにせよ、音楽の美学に深く関わるデザイン部門で認められた。
ある意味、それは変化が遅く保守的なグラミーが見せた、ささやかな賞賛のしるしかもしれない。グラミーの姿勢は消極的に感じられるが、これはK-POPの歴史において前例がなく、見逃せない進歩といえる。
ひとつだけ付け加えたい。韓国ポピュラー音楽の価値は、アメリカの音楽産業に認められることによって、証明されるものではない。また、音楽が素晴らしいか否かは、賞によって決められるわけではない。アメリカを中心にすべてを判断する旧式の考え方も、いつか必ず克服されると信じている。
しかし同時に、現実に目を向けることも大切だ。アメリカのレコード業界の威光はいまも絶対的で、世界中の音楽のトレンドを支配しているのは米国のポップスだ。
また、限界は存在するものの、グラミーは権威あるアワードとして認められ続けている。これは、誰も否定できない。
そんななかBTSは、韓国ポピュラー音楽のミュージシャンとして、初めてグラミー賞にノミネートされた。それだけで、賞賛され認められるに十分値する。私たちが気づかないうちに、多くのことが変わりつつある。もちろんこの先にも、さらなる変化があるはずだ。
(翻訳・桑畑優香)
※こちらの記事は、2020年6月12日(金)に公開されたものです。
記事提供:文春オンライン
2020.07.08(水)
文=キム・ヨンデ
翻訳=桑畑優香