「原作はもともとツッコミどころ満載なんです」

 『サザエさん』が、“スキャンダル”路線に走っているのか?「サザエさんじゃんけん研究所」の高木啓之所長に聞いてみた。

「いえ、特に最近内容が変わったとは思いません。視聴者が違和感を持つような単発ネタには原作がありますが、もともとツッコミどころ満載なんです。脚本家が長谷川さんの四コマ漫画の元ネタをツカミに使ったりオチに使ったりするのですが、どこでどう使うかによって、見え方が違うだけではないでしょうか」

 長谷川氏は、1946年から74年まで朝日新聞などで「サザエさん」を連載。これが今もアニメの元ネタになっている。調べてみると、カツオの不倫目撃は64年11月27日の朝日新聞に掲載。同日の紙面には、窃盗事件の主犯が、盗んだスイス製高級腕時計約500個を愛人宅に隠していたことが報じられており、当時の世相を取り込んでいたことがうかがえる。

今もアニメの元になっている原作漫画(朝日新聞 1964年11月27日付)
今もアニメの元になっている原作漫画(朝日新聞 1964年11月27日付)

 アニメ制作会社エイケンで、30年以上同番組に携わる田中洋一プロデューサーに話を聞いた。

「約7,000本ある原作から今の時代に合わないものなどを除いて約2,000本をベースにしています。季節やテーマに合わせて1話(約7分間)につき5〜6本を選び、脚本家の先生がその中から最低1本、多い時には全てを使って毎回新しいお話を書く。1度使った原作は、その後2年間使いません」

 放送第1回から脚本を担当、イクラちゃんの名付け親でもある雪室俊一氏の話。

「ぼくの場合は、原作を1本だけ使います。原作はキャラクターがいきいきとしている。そこを活かして今風に話を膨らませています」

長谷川町子氏。
長谷川町子氏。

プロデューサーに“過激化”疑惑を尋ねると……

 田中プロデューサーに“過激化”疑惑を尋ねると、

「過激化の意図はないし、時流も特に意識していません。極力、町子先生の原作を変えないようにしているんです。ワカメちゃんが言った『愛人を埋めたとこ』も、実は乱暴じゃないかという声もあったのですが、なるべくニュアンスを残そうと。

 アニメサザエさんを教科書のようにお堅く捉える方もいらっしゃるようですが、基本は漫画でありアニメ。日常の中でクスッと笑えることを描いて楽しんでもらうことを大切にしています」

 不倫は“タマタマ”続いているだけだった。

週刊文春 2020年2月27日号

2020年2月20日 発売
定価440円(税込)
文藝春秋
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2020.03.15(日)
文=「週刊文春」編集部