美しいアズレージョに導かれ、ヒストリカルな街並を歩く

 地図を片手に、ときには道に迷いながら建物を巡るのが、マカオ的世界遺産の楽しみ方。賑やかな繁華街をはずれ、アズレージョ(絵タイル)に導かれるように、小道を歩いてみよう。軒先にテコラッタの鉢がぶらさがる住宅街の急坂を登りきり、そこで目にするのは、中世南欧さながらの世界。石畳が敷き詰められた「聖オーガスティン広場」は、静寂の世界遺産だ。ポルトガルの血をひくマカエンセたちが、広場のベンチでおしゃべりに興じるのも、マカオの日常風景。その先には、翡翠色に塗られた瀟洒な洋館「ドン・ペドロ5世劇場」、荘厳な「聖ヨセフ修道院および聖堂」と、美しい世界遺産が続く。歩き疲れたら、「聖ローレンス教会」でひとやすみ。ステンドグラスから射し込む優しい光が、旅の疲れをそっと癒してくれるだろう。カジノの喧騒とは無縁の街角で、中世のポルトガルに迷いこんだ気分を、しばし楽しみたい。

左:レトロな街灯が並ぶ通りを歩いて、翡翠色の「ドン・ペドロ5世劇場」へ
右:ターコイズブルーの天井が美しい「聖ローレンス教会」

 教会が点在するこのエリアのハイライトとも言えるのが、「聖ヨセフ修道院および聖堂」だ。修道院に併設したバロック様式の荘厳な聖堂の祭壇には、フランシスコ・ザビエルの右腕の骨が安置されている。ザビエル亡き後、右腕の骨は日本に送られる予定だったが、キリシタン弾圧の激しい17世紀、日本での安置は叶うことなく、ここマカオに託されたのだという。マカオの守護神とも呼ばれるザビエルの遺骨は、この街を見守るように、長い眠りについている。

左:バロック様式の建物が冬の青空に映える「聖ヨセフ修道院および聖堂」
右:聖堂では、広東語、ポルトガル語、英語などでミサが開かれる

 そんなポルトガルの面影が濃厚に残る世界遺産もあれば、中国様式の世界遺産もあるのがマカオ。マカオという名前の由来になった中国寺院の「媽閣廟」や、豪邸跡の「鄭家屋敷」なども、ここから歩いて数分のところに。イースト・ミーツ・ウエストの文化が息づくこの街では、ぜひ、車を降りて、歩きながら世界遺産めぐりを楽しんでみたい。

天井からうずまき線香がぶらさがる中国寺院、「媽閣廟」

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2012.12.13(木)