イタリアのクリスマス菓子といえば、パネットーネ。パネットーネ種を使って発酵させた菓子パンです。

 東大阪市・近鉄布施駅から北へ歩くこと、7、8分。長堂1丁目交差点の西の路地を入った小さなお店「パネッテリーア・オッティモ・マッシモ」で、こだわりのパネットーネを作っているのが、吉村有紀子さん。

包装はいたってシンプル。イタリア国旗のリボンと黒ネコのパン屋さんのマークがかわいい。

「パネッテリーアとは、イタリア語でパン屋さんのこと。オッティモ・マッシモは、イタリアで修業した時に出合った黒猫の名前で、極上、最大という意味です。パネットーネは、11月の中旬から作り始め、クリスマスまで一般販売。その後は、お年賀用として予約を受けたものを、年内にお渡ししています。毎週、お店の休みの日に、少しずつ焼いているんです」

日本風の佇まいですが、実はイタリアパンのお店。

 吉村さんは、地元、東大阪市の出身。小学6年生の時に、パン屋になろうと決めたのだそう。

 製菓製パンの専門学校を卒業して、京都や滋賀、大阪のパン屋で働いた後、22歳で単身でイタリアへ。パン屋を巡って、ここぞというお店に弟子入り。その中には、後にパンの世界大会で2016年、2017年と連続して優勝者となるリカルド・リッチョーネ氏の店も。

「イタリアで4店、スイスで1店修業。1年間半の間で、学べることは全て学び吸収して帰ってきました。パン作りだけでなく、イタリア文化についてもたくさん経験できました」

 そして、2014年10月10日に、パンと焼き菓子の店をオープン。

「小麦の風味を引き出すための方法をイタリアで学び、日本人の口に合うように、配合にアレンジを加えたものもあります。小麦の味が立つように、全てのパン、全ての生地を日本人の口に合うように、ちょっとイタリア風にしています」

 一番人気は、イタリア伝統の天然酵母を用いて3日かけて作るクロワッサン。バニラビーンズやフレッシュの無農薬レモンの皮が入っていて、ほんのり甘くさわやかな味。フランスのクロワッサンとは異なる味わい。

 チャバッタやフォカッチャなどのイタリアらしいパンや、スイスで学んだ塩味が効いた「パン・オ・レ」もありますが、「あんぱんやメロンパンもこだわっているんですよ」と吉村さんはにっこり。

 取材に伺ったのは、お店の営業を休み、パネットーネだけを焼く日だったので、パンを詳しくご紹介できないのが残念。

左から、「全粒粉の山食パン」350円、「パン・オ・レ」1個120円。

 吉村さんが焼くパネットーネは、3種類。

「ブリオッシュのような柔らかく甘い生地に、レーズン、オレンジピール、レモンピールを練り込んだ生地の表面に、バターをのせて高さを出して焼き上げるのが発祥の地ミラノの伝統。バターの代わりにヘーゼルナッツのグラッセをかけてドーム型に仕上げたものがピエモンテーゼ(ピエモンテ風)です。日本の気候ではグラッセが湿気を吸いやすいので、ご希望の方のみ、予約限定で作っています」と吉村さん。

 パネットーネはミラノ発祥といわれています。また、現地ではレモンではなく、チェードロという柑橘が使われるのだとか。

左から:「パネットーネ・ミラネーゼ」、「パネットーネ・ピエモンテーゼ」(一般販売はミラネーゼのみ。ピエモンテーゼは予約限定) 大 1,300円、小(お試し用)500円。

2017.12.10(日)
文・撮影=そおだよおこ