地元の人が気づいていない、その場所の魅力

酒井順子さんとは日本海の魅力について話しました。

 そして翌9日(土)は7県DAY。日本海エリアの魅力に迫ります! というテーマで、「『裏』って幸せ?」と題したエッセイスト酒井順子さんのトークショーが開催されました。そこに私もゲストとして参加しました。

 酒井順子さんは、昨年『裏が、幸せ。』という本を出されています。

 これは酒井さんが、日本海側を旅したエッセイ。「裏日本」とかつて言われた新潟、金沢、福井、出雲、鳥取などを訪れる中で、表日本(太平洋側)に比べると開発が遅れている面があるおかげで、これらの土地に残るひっそりと輝く地や放置されている絶景を見て、「明るくて賑やかなことだけが発展や幸福の形ではなく、別の形の発展と幸福がある」と惹きつけられていき、その魅力を探っていった本です。

 トークショーは、酒井さんが実際に旅した時の写真をスライドで紹介しながら、話はすすみます。酒井さんは東京生まれ。私は広島生まれ。それぞれが外から見た日本海エリアの魅力について話しました。

限定メニューの青森県豚肉のソテー(にんにくも青森産)も美味でした。

 本の中に出てくるいくつかの場所は、私も訪れた場所でした。秋田の西馬音内で行われる盆踊りは、顔を笠や黒い布で覆い静かに踊るなかなか幻想的な踊り。隠岐の島々で見た馬たちや出雲をめぐる中で出会った古事記の神様。

 考えてみると私も無意識に日本海側を旅先に選んでいることが多かったのでした。それはたぶん旅に求めるものが「しっとりと落ち着いた」ものだからなのでしょうか。

 そうして二人ともに共通したのが、「地元の人が気づいていない、その場所の魅力」をそのまま発信してほしいということ。他の場所の真似をするのではなく、もっと積極的に自信を持ってアピールしてほしいということでした。

 いろいろな価値観や生き方が認められ、人と比べない幸せを求める人が増えている中で、きっとこれからは若い人も含めて、もっともっと「裏」と言われた日本海側の場所に興味を持ち、移動したい、住んでみたいと思っていくんじゃないかと思い、過疎と言われている場所にも明るい希望と未来があると感じました。

日本海スタイル
URL http://nihonkai-style.com/

松尾たいこ(まつお・たいこ)
アーティスト/イラストレーター。広島県呉市生まれ。1995年、11年間勤めた地元の自動車会社を辞め32歳で上京。セツ・モードセミナーに入学、1998年からイラストレーターに転身。これまで300冊近い本の表紙イラストを担当。著作に、江國香織との共著『ふりむく』、角田光代との共著『Presents』『なくしたものたちの国』など。2013年には初エッセイ『東京おとな日和』を出し、ファッションやインテリア、そのライフスタイル全般にファンが広がる。2014年からは福井にて「千年陶画」プロジェクトスタート。現在、東京・軽井沢・福井の三拠点生活中。夫はジャーナリストの佐々木俊尚。公式サイト http://taikomatsuo.jimdo.com/

Column

松尾たいこの三拠点ミニマルライフ

一カ月に三都市を移動、旅するように暮らすイラストレーターの松尾たいこさんがマルチハビテーション(多拠点生活)の楽しみをつづります。

2016.07.16(土)
文・撮影=松尾たいこ