京都の料亭「和久傳」が開いた“おもたせ”の専門店
紫野和久傳 丸の内 茶菓(東京・丸の内)
甘味:笹ほたる、西湖と希水のセット、山椒あいす
紅毛氈の縁台に野点傘。日本情緒溢れる佇まいが丸の内のビルの谷間に映える「紫野和久傳 丸の内」は、京都の料亭「和久傳」が2003年に開いた“おもたせ”の専門店です。
一歩中に入れば、店内の空気感はまるで京都。じゅらく壁をめぐらせた和の空間は清々しく静謐で、きびきびとしていながらも丁寧な所作で応対してくれる店員さんは着物姿です。
店内に入ってすぐ正面は、「紫野和久傳」を代表するれんこん菓子「西湖」や「季節の羊羹」など、風流な和菓子がショーケースに並ぶ物販コーナー。左手のカウンターと奥のテーブル席は2013年秋のリニューアル時に生まれた、つくりたての甘味をイートインできる茶菓席です。
床の間を設えたお座敷の2辺を囲むカウンター席に座れば、まるでお茶の立礼席に着いたかのように気持ちが落ち着きます。
涼やかに夏を愛でる水ようかん「笹ほたる」
風流な雰囲気も素敵な茶菓席で味わいたいのは、四季折々の「あかり」を表現した「季節の羊羹」。たとえば夏の羊羹「笹ほたる」では、切った時の切り口で、笹の上に止まるほたるが表現されています。「笹」の部分はじっくりと炊き上げた国産白小豆とお抹茶の水ようかんで、「ほたる」(の光)の部分はほうじ茶のゼリー。黒文字で切って口に運べば、上品なあんの甘さと抹茶の味わいがなめらかに広がります。続いて現れるのが、ほうじ茶ゼリーのつるりとした食感。さりげなくも絶妙なアクセントです。
2013年に茶菓席ができる以前は、1棹購入しないと味わえなかった「笹ほたる」。ここで気軽に1切れを味わえるようになったのは、うれしい限りです。
2016.06.19(日)
文・撮影=小松めぐみ