フォン川をクルーズした後は豪華な宮廷料理を満喫

フエの街を流れるフォン川をゆったりクルーズ。

 歴史建造物巡りに加えて、フエでぜひ体験しておきたいのが、フォン川のクルーズ。クルーズというと豪華客船でゆったり……というシーンを想像するけれど、ここで利用するのは、小さな観光用ボート。川面に吹く風を感じるのも気持ちがいいし、簡素なボートに派手な飾りを付けたクルーズ船は手作り感があって、心が和む。

ボートはドラゴンが装飾されていて、ちょっとキッチュなところもまたいい。

 フォン川のクルーズは40分ほど。途中、目にするのは、川沿いにある人々の暮らしだ。もともとこのあたりは水上生活者も多く、その名残か、川で洗濯をしている人をよく見かける。はにかみながらも手を振ってくれる子どもたちも可愛らしい。そんな昔ながらの、素朴な風景は、この国の穏やかさを、じんわりと感じさせてくれる。

ボートから眺めるのは、フォン川沿いにある家並みや放牧地など、のどかな風景。

 フォン川クルーズの出発地の前に立つのは、400年の歴史を持つティエンムー寺。レンガ造りの八角形をした七重の塔もみごとだが、ここは、ベトナム戦争の悲話を語るうえで欠かせない場所でもある。

 1963年、この寺の僧侶が、仏教徒に対する高圧的な政策に抗議し、サイゴン(現在のホーチミン)のアメリカ大使館前で焼身自殺を遂げたのだ。その衝撃的な姿はテレビカメラを通じて世界中に放映され、国際世論に大きな影響を与えたという。

左:ティエンムー寺のシンボルは七重の塔。「ここに支配者が訪れ、大きな塔を建てるであろう」と予言した老婆が実は天女だったという伝説があり、別名「天女の寺」と呼ばれている。
右:境内にある鮮やかな護神像。塔以外にも見どころはたくさん。

 もうひとつ、フエの楽しみといえば、宮廷料理。美食家だったといわれる第2代ミンマン帝の時代に花開いた宮廷料理は、まさに栄華の味。野菜でかたどった龍や鳳凰、蓮の花に見立てた盛り付けが、テーブルを華やかに彩る。素朴なベトナム料理とはちょっとイメージが違うけれど、こんな名物も、フエでは味わっておきたい。

目と舌で楽しめる宮廷料理はフエがルーツ。料理というよりも、野菜を使った彫刻作品のよう。

2016.04.07(木)
文・撮影=芹澤和美