リッケ・フロストのデザイン哲学――デザインは人のためにある

 本書では、現代のデンマークを代表する家具デザイナー、リッケ・フロストさんのご自宅を紹介させていただいています。私が彼女と出会ったのは、カール・ハンセン&サンでの対談がきっかけでした。とびきり素敵な方だったので、「きっとお家も素敵に違いない」と思い、撮影をお願いしたのです。

 彼女のバックグラウンドは建築。そのデザインの出発点は、かっこいい家具をつくることよりも、人の行動を観察したうえで暮らしをより心地よいものにしていく、という信念にあります。

 たとえば代表作のサイドウェイ・ソファ。丸く包み込むような形は、スマートフォンなどにより一緒にいてもそれぞれ孤立しがちな私たちが、自然と家族の会話の輪に加われるように考えられたものだそうです。たしかに、ほんの少し膝が互いの方向を向くだけで、スマホを置き、会話をしたくなります。不思議な力を持った家具です。

 デンマークデザインの核には、コーア・クリント以来の機能主義があると言われています。美しさを先に決めるのではなく、人の身体や動作、暮らし方を徹底的に考え、その結果として形を生み出すこと。リッケさんは「デザインは人のためにある」という原点を大切にしながら、現代の人の行動を観察し、さらに素材を知り尽くした職人さんとの対話を重ねて、デザインを形にしていきます。

 リッケさんがご家族と暮らす家は、美しいだけでなく、フレンドリーで、なんともあたたかい。まるで、彼女の人柄が形になったような空間です。

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行正り香(ゆきまさ・りか)

料理家・インテリアデザイナー。福岡県出身。UCバークレー卒業。デンマーク親善大使に選ばれる(2017年)など、北欧のインテリアに造詣が深い。インテリアコーディネーター、リフォームプランナーとして多くの家作りにも携わる。30冊を超える料理レシピ本のほか、『行正り香のインテリア』『行正り香の家作り』『人生をえるリノベーション』もロングセラーとなっている。探究学習・英語スピーキング教材「なるほど!エージェント」の開発も手掛ける。2023年、東京国立博物館のアンバダーに就任。館内のレストラン・カフェの照明のディレクションもサポート。二人の娘と夫の4人家族。
https://yukimasarika-living.com/
Instagram:@rikayukimasa

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