散らばった紙にびっしりと書かれた文字
「なんかの資料?」
「わかんない、なんだろう……」
「なんか書いてあるね。細かい文字で――」
この世はなんてひどいことにまみれているのでしょう。
私は大げさに見えますか。けれど実際にそうなのです。
誰かがどこかで決めています。決めた人間は名前を出しません。こちらだけに名前を書かせるのです。神様と呼ばれているもの(もしかすると先生とか、母とか、責任者とか?)が、あえて私たちを試しているのです。
なので、私は探し出すことにしました。毎日駅前のコンビニの陳列棚の奥(とりわけ飲み物コーナーの奥が怪しい)や、求人雑誌の中や、私の方を見てくるやつの瞳の奥などをチェックしました。
この文章を書くのに黄色を使ったのは目立つからです。
私は気づいてほしい。窓は開けるものではなく、向こうがこちらを見るためにあるのです。壁に穴があるのはおかしいですよね。明かりとりとか換気とか、そういう言葉でごまかしているのです。みんな見ていない。でも気持ちもわかります。人は知らない場所に来ると笑いますから。怖いときにも笑います。
中が見える。中が見えたら、もう人ではなくなります。簡単に名前を書かないでください。区別されてしまいます。(わかるとは思いますが念のため)
選ばなかったほうが残るのです。残ったものは燃やしても残ります。灰は軽いのでいろいろなところへ行くことができます。
最後まで読むのはよくありません。終わりは責任者たちが作った嘘です。
この文章も読み終わることはありません。紙は読むものではなく開くものです。開いたものは閉じても同じではありません。
この世はなんてひどいことにまみれているのでしょう。
こんなひどいことはない。あなたはもう開かれました。
黄色い紙の束にビッシリと記された意味不明な鉛筆の文字。
思わず手を離してバサリと音を立てて散らばった黄色い紙の束。
その全てに同じような文章が隙間なく記されていました。
「これ全部……ここにいた奴が書いたのか?」
「ねえ、もう帰ろう。ここ気持ち悪い感じする……」
