“裏活”当日。一同は廃旅館へ…
そうして始まったその年の“裏活”当日。一同は懐中電灯で照らしながら、風雨にさらされて朽ちた廃旅館の中を抜き足差し足進んでいました。
「ねえ、ここ地下への階段があるよ!」
「いや、数段朽ちて抜けてるし、そこは危なすぎる」
慎重に進む一同は、その廃旅館に抱いていたある違和感に気がつきました。
「物が全部そのまま残されている……」
「夜逃げ、みたいな感じかな……」
旅館から突然人だけがパッと消えてしまった、そんな生々しさがあったのです。
一部屋、また一部屋と探索を進めていった果てに、一同はついに最後の客室にたどり着きました。
「あとはここだけか。不気味だったけど、まあ普通の廃墟だったね」
「この夜逃げぶりを見るに、解体できないのは、なんか自治体との後ろ暗い金銭トラブルがあったって感じなのかな」
すでに探索を終えたような安堵感と気の緩みを覚えていたBさんたち。しかし、最後の部屋の扉を開けた彼らの目に飛び込んできたのは、これまでとは違う光景でした。
「え、うわ!」
その部屋にだけ床に布団が敷かれていたのです。
しかも、その周りにはペットボトルやビニール袋が散乱しており、部屋の乱れ具合から見て明らかに“人が住んでいた”形跡があったのです。
恐る恐る中に足を踏み入れると、部屋にはほのかにすえたような匂いとカビ臭さが充満しており、明らかにそれまでの部屋とは違っていました。
「ちょっと前までホームレスの人とかが住んでいたのかな……」
「ばったりご本人と遭遇、なんてことにならなくてマジでよかったかも」
乱暴にめくれた布団。そこに明かりを向けたとき、何か明るく目につく物が見えました。
「なんだ、それ?」
懐中電灯を向けていたBさんの言葉を受けて、メンバーの1人だった男性のEさんが、敷き布団の下から顔を出していたそれを拾い上げると、黄色い紙の束とわかりました。
