40年以上続いた独裁と「新しいポルトガル」の幕開け

 震災の影響を免れ、現在も中世の気配を感じさせる場所もわずかだがある。非常に堅牢な構造ゆえに倒壊しなかったベレンの塔やジェロニモス修道院、そして「アルファマ」と呼ばれる旧市街エリアだ。

 ただし迷宮のような細い路地に哀愁漂うこのアルファマ地区は、震災とは別の意味で時代の影を感じさせるエリアでもある。

 19世紀にナポレオンが侵攻してきたことをきっかけにポルトガル王政は衰退の一途を辿り、20世紀初頭に共和制が樹立。しかし政治は長く混迷を極め、軍事クーデターを経て1932年、一人の経済学者が政権を握ることになる。後に「サラザール独裁政権時代」として40年近くポルトガルに暗い影を落とすことになるアントニオ・デ・オリベイラ・サラザールだ。

 自由民主主義を否定し、秘密警察による監視や厳しい検閲を行った。かわりに娯楽として利用されたのが哀愁漂う歌「ファド」やフットボール。第二次世界大戦の激動する世界から切り離された社会の中で徹底した保守政策を敷いたことで、くしくもアルファマなどの旧市街エリアを保存することにも繫がった。

 1974年4月25日、驚くほど穏やかに独裁時代は終わる。兵士が銃口にカーネーションを差し込んだことから「カーネーション革命」と呼ばれる軍事クーデターを機に、ポルトガルは欧州各国に約30年遅れるかたちで民主主義と自由を取り戻したのだった。

 それから約50年、リスボンは今も変化のさなかにある。若き起業家が集まるテクノロジーやアートの拠点として新風が吹く一方、ゴールデンビザや不動産投機の影響で地元住民の住環境が危ぶまれている。

 栄華と衰退、崩壊と復興、抑圧と革命。歴史の中心にいたリスボンに刻まれているのは時代をしなやかに生き延びてきた痕跡だ。

 そして今も歩み続ける都市の姿を目に焼き付けるように、まっすぐな目抜き通りを、石畳の路地を、踏みしめるように歩いてみる。

Mosteiro dos Jerónimos(ジェロニモス修道院)

ポルトガル大航海時代の繁栄を象徴する世界遺産。ポルトガル独自の建築様式である「マヌエル様式」の傑作。左右対称の堅牢な造りで震災でも倒壊しなかった。

所在地 Praça do Império, Lisboa
電話番号 213 620 034
営業時間 9:30~18:00(冬季~17:30)
定休日 月曜
料金 18ユーロ
https://www.museusemonumentos.pt/

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