質の高い走りと経験がもたらす、新しい味わい

 やがて峠道を抜け、丘陵地の緩やかなアップダウンになってくると、左右をオリーブの木々や葡萄畑に囲まれた心地よいカントリーロードが広がってきた。

 アノイア地区の中心にして、カヴァの産地として知られるのはサン・サドゥルニ・ダノイアという街だ。そこから3kmほど先、葡萄畑に囲まれたワイナリー・ヴィラルナウがある。

 19世紀後半、二次発酵をボトル内で行って発泡を得る製法「メトッド・トラディショネル(伝統的製法)」をフランスのシャンパーニュ地方で学んでこの地に伝えたのが、カタルーニャ人の醸造家だった。その直後、ヨーロッパのワイン産地を壊滅的な状態に陥れたフィロキセラ禍が起こり、葡萄畑のリセット、つまり旧来の栽培品種からの植え替えや見直しを迫られたのと並行して、スペイン各地にカヴァの製法も広がっていった。そのため、カヴァとはカタルーニャ語の「洞窟、セラー(cava)」を意味するにもかかわらず、リオハやバスク、バレンシアなどスペインの他地域でも生産され、それらもカヴァを名乗ることを許されている。

 今でこそ原産地呼称制度により、カヴァの産地はカタルーニャと先述の他地域に固定された訳だが、元より地域ではなく製法による発泡性ワインを指すのは、そのためだ。つまり逆説的だが、カタルーニャはカヴァの原初のテロワール。今もカヴァの生産量の9割以上を占め、大資本メーカーによる集約もある一方、独立系の生産者も少なくない。その生産者のひとつが、12世紀以来この地でワインを醸してきたヴィラルナウというわけだ。

 カヴァに用いられる品種は、5種類の白葡萄と4種類の黒葡萄があり、ヴィラルナウは前者にマカベオ、パレリャーダ、チャレッロやシャルドネ、後者にガルナッチャやピノ・ノワールを用いている。いずれもオーガニック栽培を基本としており、定番の「ブリュット・レゼルヴァ・オーガニック」は出荷までに15カ月以上熟成、年号によるヴィンテージは24カ月、長ければ5年以上の熟成期間を要するグラン・ブリュットもある。

 アノイア地区がカヴァに適した土地柄であるのは、ミネラル分豊かな海洋性の石灰質という地質もさることながら、寒暖差がありながら適度に乾燥した気候に恵まれているがゆえ。カタルーニャの太陽に加え、水はけのよい盆地で湿った海風は遮られるが、北側にそびえる標高1,200mほどの山脈、ムンタニャ・デ・モンセラートが、霜をもたらすような冬の北風をも遮るのだ。ここは鋸歯(きょし)のように尖った奇岩の景勝地にして、自然公園でもある。

 ちなみにスペインは南欧州の常で、グラス1杯程度の血中アルコール濃度なら車の運転は許されるお国柄。だがヴィラルナウでは、ブリュット・ナチュラルを中心に比較テイスティングが楽しめる3本が1箱に収められたセット(23ユーロ、約4,300円)があるので、車のトランクに入れて持ち帰る方が断然スマート。しかもEX60のラゲッジスペースは、エンジン車と違い熱くなる心配もなければ、縦に深い床下収納スペースも備わっているためワインボトルとの相性も抜群だ。

次のページ 電動モビリティで味わい深い体験を