健康的でしなやかなボディとトレードマークの弾ける笑顔。ミラノ・コルティナ五輪銀メダル、世界フィギュアスケート選手権金メダルに輝いた坂本花織選手の活躍の裏側には、食事面からアスリートを支える「ビクトリープロジェクト®︎」の存在があった。坂本選手はどのようにして食べないダイエットから脱することができたのか、味の素の高柴瑠衣さんにお話を伺った。
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「食べる=怖い」から「食べる=楽しい」へ
――最初に、高柴さんと坂本選手との出会いから教えてください。
引退を表明していた今年3月のフィギュアスケート世界選手権で、坂本選手は金メダルを獲得して有終の美を飾りました。そのちょうど1年前の同大会に「ビクトリープロジェクト®︎」が帯同していて、最初は大勢のスタッフの1人としてお会いしました。
裏表がなくいつも明るい坂本選手ですが、当時は、部屋から他の選手がいなくなるとその場で寝てしまうなど、疲れた様子が垣間見られました。
――当時の坂本選手は、食事面で何か悩んだりしていたのでしょうか?
坂本選手と会話を重ねていく中で、かなり食事を抑えていることがわかり、それが原因で、疲れやすい、朝起きられない、風邪をひきやすい、練習の最後まで集中力が続かない、甘いものを衝動的に食べてしまうなど、さまざまな悩みを抱えていることもわかりました。
全体的に見ると、食事面での課題は食事を楽しめていないことにあると感じました。あれだけ運動量が多いにもかかわらず、日常生活レベルと変わらないほどの食事量で、すべての栄養素が足りていませんでした。
また、食べ物を選ぶときに、たとえば、疲労回復のために体がオレンジジュースを欲していても、糖分を気にしてお茶やお水を選ぶなど、頭で考えて食べるものを選んでいたんですね。それでは食べることが楽しくないですよね。
――食事を楽しめるようになるために、どのようなアプローチをされたのですか?
これまで、食事のプロを頼ったり、自己流でどうにかしようと試みたり、さんざん悩んで考えてきたけれど、結果的にうまくいかなかった。その背景も聞きながら、坂本選手には2つの提案をしました。
1つめは、「食べる=太る、怖い」という食べ物に対するネガティブな印象を、「食べる=体を強くする、楽しい」というポジティブな思考に変えていこう。
2つめは、努力家で真面目な性格ゆえに、無理をしてまで頑張ってしまうところがあると感じたので、手を抜けるところは抜いて、どんな状態の時でも継続できることを最優先にしていこう。
この2つを軸に、食事の組み立て方のポイントをお伝えしていきました。
――すべての栄養素が足りていないということは、食事をプラスする方向でのアドバイスをされたのでしょうか?
基本的には、そうです。坂本選手は、おかずがなくても白米だけで食べられるというくらいお米が好きなのに、ご飯、パン、麺類などの炭水化物の摂取量が圧倒的に足りていませんでした。
「炭水化物はスケートを滑る体力を支えていて、不足すると脳も働かないから練習中の集中力も続かないし、コーチのアドバイスを後から整理して活かすことも難しくなるよね」など、彼女がもっとも興味のあるフィギュアスケートと紐付けて、なぜ食べる必要があるのかを最初に説明しました。
――フィギュアスケートのために食べる。その必要性を頭では理解しても、糖質オフなど食べないダイエットを長く続けていると、白米を食べるのが“怖い”と感じてしまわないでしょうか?
私も過去に糖質抜きダイエットをした経験があるので分かりますが、今まで控えてきた糖質を摂るのは怖いですし勇気がいりますよね。
坂本選手もきっと同じだろうと思ったので、炭水化物などの糖質を摂るという提案を受け入れてもらいやすくするために、あえて脂質を控えめにするという引き算の要素を設けました。
ただ、そもそも食事の絶対量が足りていないので、脂質も摂りすぎてはいませんでした。なので、揚げ物を気持ち控えようとか、ほんの少し意識するレベルで脂質を抑えてもらいました。
