2024年に公開されたドキュメンタリー映画『どうすればよかったか?』は、統合失調症を発症した姉、病気を認めず南京錠で姉を閉じ込めた両親、そしてその家族に20年にわたってカメラを向け続けた弟・藤野知明監督の記録だ。

 興行収入2億3000万円超えという異例の大ヒットを果たし、同名書籍『どうすればよかったか?』も発売から版を重ねて7刷となった本作。映画ライター・ISOによる書籍刊行記念インタビューでは、作品を世に出すことへの覚悟と、公開後に広がった藤野監督の視野が語られた。


映画では語られなかった、衝撃的な事実

 藤野監督が最も強調したのは、映像を公開することへの倫理的な重みだ。父親は撮影当時96歳で後見人を必要とする状態であり、姉も映画公開時にはすでに鬼籍に入っていた。

「誰からも正式な承諾は取れていないんです。だから倫理上の問題があることは自覚していますが、その責任はすべて自分で引き受ける覚悟で制作しました」と藤野監督は語る。批判的な意見が押し寄せることを覚悟していたからこそ、映画公開前は緊張で口の中が傷だらけになったという。

 書籍では映画では語られなかった衝撃的な事実も初めて明かされた。父親が台所で姉のお茶にだけ透明の液体を混ぜているところを目撃したというエピソードだ。その後、藤野父親に聞くと、「向精神薬を使っていた。けどもう使うのはやめた」と答えたという。つまり、病院に連れていくことを拒否していた父親も、内心では姉が精神疾患を抱えていることを認めていたのだ。

 処方箋のない向精神薬とみられる薬の投薬行為は、南京錠による半監禁とともに複数の法律に違反する可能性があると藤野監督は指摘する。しかし、同時に高齢の精神科医から「当時の病院に子どもを入院させなかった両親の判断は適切だった」と告げられ、公開前には持てなかった視点も得た。「姉の治療を拒むべきではなかったという考えには変わりありませんが、公開後にいろんな意見があがってくると、父や母が考えていたことにようやく追いついてきた気はします」。

 記事本編では、藤野監督が家族の苦闘を20年分記録した作品の舞台裏について詳しく語っている。

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本編は、以下のリンクからお読みいただけます。

【#1を読む】「“家族”がキーワードだと気づいていなかった」統合失調症の姉を撮影した映画『どうすればよかったか?』が大ヒットした本当の理由
【#2を読む】「姉のお茶だけに透明の液体を」「南京錠で半監禁状態に」『どうすればよかったか?』著者が明かす、統合失調症の姉が入院するまでの“25年間”

どうすればよかったか?

定価 1,650円(税込)
文藝春秋
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