キャストやスタッフと何度も相談して決めた「L.L.Bean」のフリース
――杉本さんご自身、とくに印象に残っているコーディネートはどれですか?
視聴者の方からもたくさん反響をいただいた、第1話のコインランドリーのシーンで着ていた「L.L.Bean」のジップアップフリースにスウェットパンツを合わせたコーディネートです。コインランドリーで初めて出会った人の家に行く、という設定だったので、どうすれば文菜が変わっている子に見えすぎないか、ということを強く意識しました。同時に、コインランドリーという場所のラフな空気感も大切にしています。
賛否が分かれる設定かもしれませんが、「この二人なら、自然に仲良くなりそうだよね」と思ってもらえるようにこだわりました。文菜というキャラクターを最初に形づくる、大切なコーディネートだったと思います。
それに、第1話はこの服を着ている時間がとても長いんです。だからこそ、印象に残りながらも、映像の邪魔をしないというバランスも大切にしていました。
――このコーディネートに決まるまでには、いくつか候補もあったのでしょうか?
そうですね。さまざまな候補の中から、このスタイルに決まりました。当初は、私と杉咲さんの間で、もう少し色味のあるアイテムを取り入れてもいいのではないか、という話もしていたんです。無機質なコインランドリーの空間の中で、少しアクセントになる色があってもいいのかな、と。ただ今泉監督が、「文菜という人物を一番落とし込めているのはこれだと思う」と選んでくださいました。完成した映像を観て、このコーディネートで良かったと改めて感じました。
このL.L.Beanのフリースは古着のアイテムで、実際に学芸大学や代々木上原あたりのショップを回って見つけたものです。
あえて「HYKE」のダウンジャケットを何度も登場させています
――杉本さんが影響を受けた、衣装が素晴らしいと思う映像作品を教えてください。
最近だと、Netflixの『First Love 初恋』です。色にとてもこだわりが感じられて、キャストの方々がブルー系の衣装を多く身につけていらっしゃるのが印象的です。
私自身も、キャラクターの心情に寄り添いながら服の色を選ぶことが多いのですが、細部まで色味が統一された映像が持つ力を改めて感じました。映像の中で、服の色が登場人物の感情をそっと伝えてくれる、衣装の持つ表現の豊かさを、改めて実感した作品でした。
――杉本さんが映像作品のスタイリングを手がける上で大切にしていることを教えてください。
もちろん物語にもよるのですが、ドラマを手がけるなら視聴者の方が見て「これ着てみたいな」「こういったコーディネートしてみたいな」と思ってもらえるようなものを選びたいと思っています。そして、役柄に寄り添うことも大切です。ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』では、松たか子さん演じる大豆田とわ子は、キャリアを重ねてきた女性であり、自分の良いと思うものをきちんと選びとる役柄だったので、毎回様々な洋服を着てもらいました。
一方今回のドラマの文菜は、大豆田とわ子よりも若いですし、彼女と比べて収入も高いわけではないと思うので、あえて「HYKE」のダウンジャケットを何度も登場させています。彼女にとって大切な一着であり、日常の中で自然に着続けているものとして。そうしたリアリティを積み重ねていくことも、意識しています。
杉本学子(すぎもと・のりこ)
東京都出身。文化服装学院卒業後、祐真朋樹氏のアシスタントを経て独立。広告や雑誌を中心に活躍。TBS『大豆田とわ子と三人の元夫』やテレビ朝日『しあわせな結婚』の松たか子さんのスタイリングなどを担当。
『冬のなんかさ、春のなんかね』
日本テレビ系毎週水曜よる10時~放送中
Huluはじめ各種配信サービスで全話配信中
あらすじ
小説家の土田文菜(杉咲花)は近所にあるコインランドリーをよく利用している。なんとなく寂しいその空間が好きなのだ。ある冬の夜、音楽を聴きながら日々持ち歩いている<思考を整理するためのノート>に言葉を書き連ねつつ洗濯が終わるのを待っていると、自分のお店の洗濯乾燥機が壊れてしまって、この日たまたまコインランドリーを利用していた美容師の佐伯ゆきお(成田凌)と出会うことに。文菜のイヤフォンから音漏れしていたミッシェル・ガン・エレファントのファンだというゆきおと他愛もない会話をした文菜は興味本位でゆきおの美容室についていく……。
出演: 杉咲花、成田凌、岡山天音ほか
監督・脚本:今泉力哉
