北九州で書店員として働くかぁなっきさんの軽妙な語り口が魅力の「禍話(まがばなし)」。2016年から生配信サイト「TwitCasting」上で放送されてきたこの怪談語りチャンネルは、日常と非日常の境界がじわりと揺らぐような珠玉の怪談が揃っていると、多くのホラー作家たちがファンを公言しています。
そんな禍話から今回は、とある少年が訪れた親戚の屋敷で経験した、夢と現実が混ざったかのような不可思議な体験談をご紹介します――。
襖を開けるとそこには……
そのこたつには、Yさんに背を向けるように一人の男が座っていました。
「あっ、ごめんなさい……」
さっきまで聞こえていた話し声と両親に会いたかった気持ちはすっかり消え去り、代わりにYさんの心の中にあったのは“この戸は開けない方が良かった”という後悔の念だけでした。
しかし、男はYさんの声を受けても返事を返しません。そればかりか、突然背を向けたまま体を前後にグッ……グッ……と揺らし始めたのです。
まるで誰かに肩を揺さぶられているかのように、一定のリズムで力なく揺れ続ける男の背中と首。
「さんじゅうはち……」
小さなつぶやき声が、かすかにYさんの耳に聞こえてきました。










