オーソドックスさは聴き手への優しさか
伊藤 今回の「さくらのうた」はオーソドックスな桜ソング。高橋優だったらもっと捻ってくるのかな? って思ってたけど、こんなに真っ直ぐなことで裏切られた感じもした。その真っ直ぐさが聴き手への優しさなんじゃないかな。実際は5分近くある曲なんだけど、あっという間に聴き終わって、もう一度聴きたくなる。「きっとこの世界の共通言語は 英語じゃなくて笑顔だと思う」みたいなキャッチコピーはないんだけど、それを逆に高橋優の誠実さに感じさせられるから、そこが面白い。
山口 さて、そんな高橋優の桜ソング「さくらのうた」からは、どんな妄想分析が浮かびましたか?
伊藤 ヤバいよ、桜ってこんなに……クル。
よくある話だけど、卒業シーズンとかになれば別れ。そう僕も今年で高校を卒業、でも別れってそんなに哀しかったり、切なかったりするのだろうか? だって僕らは旅立ちの時にあるんだし、後ろを向いて生きているわけではない。そう思っていた僕はいま学校の前に立ち、満開の桜を目の前にして思う。
そうだ、3年前は中学を去って、希望と恐怖の高校。地元と違って知らないやつらが沢山いて、丘出身の僕には海岸線は異国。それでも、良い出逢いもあれば、嫌な出逢いもあり、笑い転げるようなこともあれば、忘れたいこともある。だけど、またここを去るんだ。きっとこれからもっと色々と去るんだろうけど、それ以上にまた希望と恐怖。あぁ社会とか怖すぎる。
当たり前に咲いていた桜って、年を区切るものではなくて、僕の人生を刻むもの。そう思うたびに、見上げるたびに、桜は綺麗に儚く、また儚くなっていく。ひゅるりら、ひゅるりら、あぁ、そんな桜ソングあったね。
ヤバいよ、桜ってこんなに……クル。
山口 18歳の男の子に憑依するとは。さすが作詞アナリスト!
高橋優「さくらのうた」
ワーナーミュージック・ジャパン 2016年3月9日発売
期間生産限定盤[CD+DVD]2,300円、通常盤[CD]1,200円(税抜)
■高橋優は、1983年生まれ、秋田県出身。まだデビュー前の2010年に「福笑い」が東京メトロのCMソングに抜擢される。同年メジャーデビュー。本作には、表題曲の他、TBS系ドラマ「悪党たちは千里を走る」の主題歌「クラクション」、亀田誠治とのユニット・メガネツインズによる「メガネが割れそう」など、全4曲を収録。
■「さくらのうた」作詞・作曲/高橋優 編曲/池窪浩一、高橋優
■オフィシャルサイトURL https://www.takahashiyu.com/
【動画サイト】
「さくらのうた」
URL https://www.youtube.com/watch?v=MNZh3sO07xA
2016.02.28(日)
文=山口哲一、伊藤涼