「まっちゃまち」と大阪では当たり前のように呼ばれる、大阪市中央区松屋町。江戸時代から菓子問屋が集まったエリアで、明治時代以降には人形、玩具、紙、文房具などの問屋ができました。松屋町筋を歩けば、菓子、人形、花火などの看板が目につきます。

パッケージもおしゃれな焼き菓子のお店「杏」。
自然のぬくもりがあふれる外観。

 「杏(あんず)」は、そんな松屋町筋の裏通りに、2015年1月15日オープンした焼き菓子とナッツのお店。

 駐車場奥にある木の扉を開けると、木と鉄などでまとめられた男っぽい雰囲気のインテリア。間接照明でほんのり浮かび上がる落ち着いた空間の奥には、カフェコーナーもあります。

 平台にさりげなく並べられたお菓子は、全て、お洒落な個包装。大きなガラスのショウケースがあるわけでもなく、お菓子が目立つように飾られているのでもなく、素っ気ないくらいにシンプル。壁面の棚には、ナッツが並べられています。一見、お菓子のお店には見えません。

まるでおしゃれな雑貨屋さんかアパレルショップのような雰囲気。

 「クラシックなお菓子が好きです」と、お菓子を作っている田畑あい子さん。モノづくりが好きで、大学卒業後、料理の専門学校を出てからパン屋やケーキ屋などで働きました。週末にお菓子を作り始めてイベントに出店したり、カフェや雑貨店に卸したり。「趣味の延長が、いつしか仕事になって、自分のお店を持つようになりました」とにっこり。

 「ここは、父親が営むナッツの加工販売会社の倉庫だったスペース。高い天井や配管などを残した内装も楽しんでほしい。お菓子には、父の会社で作るアーモンドパウダーやナッツ類を使っています」。それで、アーモンドのイメージにつながる「杏」という店名にしたのだそう。

左:落ち着いた雰囲気のカフェコーナー。
右:木箱に並べられた焼き菓子。

 「アーモンドパウダーを使った焼き菓子がテーマです」と田畑さん。アーモンドパウダーを使うと、ケーキの生地はコクが増してしっとりし、クッキーは香ばしい風味になります。田畑さんが手作りするお菓子は常時9種類程。

 「フィナンシェ」は、4×2センチ程度のひとくちサイズ。アーモンドパウダーの割合を増やしており、食べると、小さいけれどアーモンドと焦がしバターの風味が広がって、後口にもしっかり残ります。しっとりした食感で、口溶けも抜群。ひとつでは止まらなくなってしまいます。

左から「黒豆フィナンシェ」3個入り1袋180円、「フィナンシェ」3個入り1袋170円。

 「黒豆フィナンシェ」は、プレーンのフィナンシェ生地に醤油で炊いた和風の黒豆をトッピング。豆の風味とほのかな醤油味がアーモンドとバターの香ばしさにマッチして、意外なおいしさ。コーヒーにも、日本茶にもよく合います。

2016.01.31(日)
文・撮影=そおだよおこ