悔しくてお風呂で落ち込んだことも
――右近さんとの稽古が始まった頃にCREA WEBではその様子を取材させていただきましたが、あの後は順調でしたか?
順調、という感じじゃなかったです。なんか……。どんどん落とされて、自分で這い上がっていく、みたいな……。
》「親が歌舞伎俳優でなくとも…」 尾上右近が、尾上眞秀の“憧れの演目” 『連獅子』を踊りたかった理由
――『連獅子』には、親獅子が仔獅子を「千尋(せんじん)の谷」に突き落とす場面があります。作品の設定さながらの状況だったのでしょうか?
はい。お稽古中に、1度は出演をやめたいと思ったくらい苦しかったです。
――どうやって乗り越えたのですか?
何回も自分の踊りを撮ったビデオを見て、できていないところを直しました。それを右近さんに見ていただいて、また直して。そうやって少しずつ上がっていった感じです。
――その経験が、歌舞伎座での右近さんとの『連獅子』(2026年4月)につながりました。これは嬉しかったでしょう?
はい。あのときにあきらめなくてよかったと思いましたし、右近さんに落としてもらってよかったと思いました。でも……。
――嬉しいだけではなかった?
稽古が始まったら、また同じでした。すごく落ち込んで、周りの人の声が入ってこないくらい悔しくて、お風呂でじっとしていたこともあります。また、そこから上がっていかなきゃなりませんでした。
――そこでまたがんばったからこそ、いま歌舞伎座で『屋敷娘』を踊ることができているのだと思います。共演中の中村壱太郎さんとは、文楽、歌舞伎、ダンスが融合したマルコス浄瑠璃『金閣寺』でも共演したばかりですね。
はい。壱太郎さんと同じ舞台に立つのは、『金閣寺』が初めてでした。歌舞伎では今回が初めてです。『金閣寺』は、みんながほとんど何もわからない状態から集中して作品をつくっていく感じでした。今度は歌舞伎の踊りなので、壱太郎さんから女方のことをたくさん学びたいと思っています。
