一番多い感想は「自分に戻れる」

 お客様からいただく声で一番多いのが「自分に戻れる」という言葉です。

 なぜ、そういう感想が生まれるのか。それは、このセッションが「頭で選ばない」体験だからだと思うんです。私たちは日頃、キャリアも、ファッションも、言葉も、「こう見られたい」「こうあるべき」というフィルターを通して選んでいます。でも、嗅覚はそのフィルターを飛び越えてしまう。先ほどもお話したように、嗅覚は脳のOSを通さない。思考より先に体が動く感覚。選ぼうとしなくても、選べてしまう感覚。それが「自分に戻る」という体験につながって、出来上がった香りをつけているときも、自分に戻る感覚を得られるのかもしれません。

「よく眠れるようになる」「部屋を掃除したくなる」といった感想もいただくのですが、アロマテラピーの効果を試していたとき、人は香りと対面すると、自然と自分が必要としているものを選ぶということに気づきまして。それによって自分が満たされて気持ちよく眠れるようになったり、部屋を突然きれいにしたくなったりといった次の満足度を求める可能性もあると思います。

自分の中にある何かを「発見する」体験を提供したい

 私自身の嗅覚については、幼少期の頃から鼻が利いたので家族には「犬みたい」と言われていました(笑)。たとえば家に帰ってきて、わずかな残り香でさっきまでここに誰がいたというのがわかったり。ただ、問題もあって、以前ある匂いをうつしたバター12種類を嗅ぎ比べて、何の匂いをうつしたものか当てるワークショップがあったんです。正解は「カレー粉」なのに、私はフェネグリーク、クミン、コリアンダーって、カレー粉にブレンドされていたスパイスを答えてしまうという……。香りを分解しすぎてしまい、全体像をつかむのがじつは苦手なんです。

 でも、だからこそ、自分のクリエイションをあえて前面に出さず、相手の本音を香りとして形にする「BESPOKE FRAGRANCE」という形態が自分には合っているのかなと。

 私が提供したいのは、フレグランスを「買う」のではなく、自分の中にある何かを「発見する」体験です。よく眠れるようになるか、部屋の掃除がしたくなるか、どんな発見に至るのかはやってみないとわかりません。でも少なくとも、ご自身がどんな香りを本能で「いい」と感じるのか、頭を使わずに知ることができます。それだけでも、価値があることだと思っています。

次の記事に続く 自分の嗅覚を頼りに作られる“一生ものの香り”!「頭で考...