さよなら、カンヌ。ただいま、京都。

 長時間のフライトも、帰りはぐっすり寝ていたら、なんだか大きな夢の中にいるみたいだった。起きても起きても、飛行機で、私はこのまま、ここから出られないような心地になって、映画は一本も見なかった。日本に近づいてくると、機長が「左手に富士山が見えます」とアナウンスをした。通路側だった私はうまく見えなかった。隣の乗客が携帯を貸して、といってくれ、富士山を撮影してくれた。富士山は太陽よりも人見知りする感じ、あるな。照れてる時とかあるもんな。

 写ルンですはカンヌで使いきれなかった。疲れる間もないまま、始まった京都、出町座での上映に持っていく。鴨川はやっぱり、ほんとうにいい。全ての人が、時間と戯れている。

 OK project で作った短編『外と』と、私が大学生の頃に作った『眠る虫』の上映。二井さんとトークイベントに登壇した。上映には平日なのに30人以上が足を運んでくれて、ハッピーな気分。出町座の田中さんが「『外と』はマニュフェストのような作品だ」と言ってくれてうれしい。

 國ちゃんが新しく作ったお店、或魅(アルミ)では、京都時代に飲み屋でよく会っていた平井さんがいて、久々なんて言ったり。最後の1枚。撮りますよって宣言をして、ここ最近のわたし、人に優しくされすぎている。というか、目が合えば、人はだいたい優しい。少なくとも、今はそう思っている。

 なんだか最近は、思い出がありすぎて、気持ちの腕力が強くなっている。

》金子由里奈さんが撮影してきたカンヌの風景を一覧で見る。

OKプロジェクトとは

映画監督・金子由里奈と映像プロデューサー・二井梓緒が立ち上げたコレクティブ。仲間を巻き込みながら制作を行う姿勢から、「編み物みたいな映画作り」を謳っている。2025年6月、俳優・加賀田玲とともに三鷹SCOOLで「映画『観測者たち』のための演劇『観測者たち』」を上演。同年10月には俳優・田中陸、音楽家・日高理樹と音楽劇『観測者たち』を創作。いずれも満席となり、映画企画のプロセスを可視化し作品として提示するという新しい試みとして注目を集めた。こうした実践から得た上演収入や支援金をもとに短編『外と』を制作し、ポレポレ東中野での上映チケットは即完。現在はユニジャパン「フィルムフロンティア」に採択され、今秋には短編『おばけのはっぱ』撮影予定。
公式サイト:https://okprojectfilm.tumblr.com

金子由里奈 Kaneko Yurina(かねこ・ゆりな)

東京生まれ。立命館大学映像学部卒業。2023年、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』で長編デビュー。同作は国内外の映画祭で広く上映され、新人賞を複数受賞した。人間と、その傍らにあるものを観察することを軸に、映画・劇作・文筆など幅広い分野で創作を続けている。最新作は映画について散歩するように探求した短編『外と』。