演出家の思考を立体化する、ゼロからの挑戦

――先ほど“宿命”という言葉がありましたが、デンマーク王子のハムレットと、高麗屋に生まれた染五郎さん。ご自身の宿命と重なる部分はありますか?

 高麗屋の人間として宿命を感じることはありますが、ハムレットにそれを投影させるつもりはありません。あくまでハムレットはハムレット、自分は自分。まったく別の人間の人生ですから。

 自分の人生経験を役に反映させる演じ方はしたくないと常々思っています。ただ、お客様の視点から見て、結果的に重なって見える部分はあるのかもしれません。

――ご自身の人生として、高麗屋に生まれた宿命や葛藤をどう捉えていますか?

 歌舞伎が好きで、それを仕事にできているので幸せですが、ある意味で“生まれる前”から決まっていた道です。もし仮に嫌だったとしても「嫌です」とは言えなかったでしょうね。

 レールが敷かれているところに生まれた感覚はありますが、だからといって“道”そのものが用意されているわけでも、楽なわけでもありません。例えるなら、道を作るための最低限の材料だけを渡されて、「あとは自分で道を作れ」と言われているのだと感じています。

――劇団☆新感線や三谷かぶきなど、外部の演出家との仕事も経験されています。今回のルヴォー氏の演出に期待することは?

 ルヴォーさんとは2年前に一度お会いしていますが、ご一緒するのは今回が初めてです。昨年は三谷幸喜さん、野田秀樹さん、いのうえひでのりさんといった、演劇を突き詰めてこられた方々の演出を受けられたことが、自分の中で大きな糧になっています。

 “歌舞伎”という枠組みの中ではありましたが、古典とは作り方が異なり、ストレートプレイに近い制作過程を経験できました。三者三様に進め方も異なりますので、ルヴォーさんがどのようなプロセスで作品を積み上げていかれるのか、とても楽しみです。

――演出家がいる現場で、特に意識していることはありますか?

 演出家の方が頭の中に描いているものを立体化させるのが役者の仕事です。彼らが何を考え、何を作りたいのかを敏感に感じ取るよう意識しています。

 古典は、教わった型を身につけ、その枠からはみ出ない範囲で役を突き詰めていきます。対して新作やストレートプレイは、演出家や共演者の皆さんとディスカッションしながら、ゼロから実体化させていく作業です。より密なコミュニケーションが必要になりますが、これまでの経験を存分に活かしたいですね。

市川染五郎(八代目)

2005年3月27日生まれ、東京都出身。父は十代目松本幸四郎、祖父は二代目松本白鸚。2009年6月、歌舞伎座『門出祝寿連獅子』の童後に孫獅子の精で四代目松本金太郎を名乗り初舞台。2018年に八代目市川染五郎を襲名、『勧進帳』で源義経を演じた。近年の主な歌舞伎出演作に、『源氏物語』、歌舞伎 NEXT『朧の森に棲む鬼』、『木挽町のあだ討ち』ほか。ドラマ『鎌倉殿の13人』、『鬼平犯科帳』、映画『レジェンド&バタフライ』、Prime Video『人間標本』など映像分野でも活躍。本作で初のストレートプレイに挑む。

『ハムレット』

出演:市川染五郎 當真あみ 石川凌雅 横山賀三 梶原善 柚香光 石黒賢 ほか
演出:デヴィッド・ルヴォー
作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子

【東京公演】日生劇場
2026年5月9日(土)~5月30日(土)
【大阪公演】SkyシアターMBS
2026年6月5日(金)~6月14日(日)
【愛知公演】名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館)大ホール
2026年6月20日(土)~6月21日(日)

https://hamlet2026.jp/

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