女性皇族として初めて、海外で博士号を取得された彬子女王殿下(以下、彬子さま)。そのオックスフォード大学での日々を綴られたエッセイ、『赤と青のガウン オックスフォード留学記』(PHP文庫)が池辺葵さんによりマンガ化されました。

 コミカライズにあたり、池辺さんはどんなふうに作品と向き合ったのか――全2回のインタビューをお届けします。

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キャラクターではなく“人間”を描くということ

 ところで、池辺さんは彬子さまのキャラクターデザインをどんなふうに決めたのだろう。

「実はキャラクターという言葉がキライなんですね。いまではマンガ用語だと理解はしているんですけれど、かつては“キャラクター云々”とか言われることに『キャラクターを描いているわけじゃない、人間を描いているのだ』とかなり抵抗がありました。なので、最初からキャラクター作りみたいなことはやっていないですし、あと『似せないといけない』という感覚もあまりないんですよね。

 彬子女王殿下以外の人物についても、資料写真はたくさんいただいたのですが、勝手に作っている実在しない人物もいます。たとえば、殿下が日本の本物のプリンセスだとなかなか気づかれないエピソードがありますが、あそこで〈まだかいっ まだわからんのかいっ〉と横でずっこけている女性なんかは創作なんです。

 また、〈しゅた〉と駆け出そうとしている殿下や、マラカスを持って〈シャンシャン〉と効果音を鳴らしている殿下など、マンガ的なコミカルな表現も使っています。でもそれを面白がってくださっているようです。

 毎回、ネームも下絵もすべてお見せしていますし、『これはおかしいということがあれば、なんでもおっしゃってください、直しますから』という話もしているんですけれど、あまり何もおっしゃらなくて自由に描かせていただいているので、逆に不安になるくらい」

 しかし、「これは、違います」とおっしゃったことがあるそうだ。それが側衛のシオダさんのキャラクターデザイン。このエピソードについては、彬子さまが本書に寄せた特別エッセイにも書かれているので、読んで楽しんでほしい。

 池辺さんによれば、彬子さまにお会いしてから変わった創作のポイントがもう一つある。

「殿下の言葉のリズムを壊さないようにしようと思ったんです。自分も原作者であったことがあるし、もともと映像やマンガにするときに原作というものを尊重するという意識がすごく強い。ですので私自身も、一切いじらずに最大限のリスペクトをしようと決意してこの連載を始めたんです。

 とはいうものの、お会いする前に描いた第1話から第3話は、内容が一緒だったらいいかなという考えもあって、少し言葉を変えたりしたんですね。でもお話ししてみて、殿下には独特の言い回しや話の流れの作り方があるとわかりました。

 言葉の選び方も軽やかというか、ちょっとユニークなんですよね。言葉のリズムというようなもの、それは私にも私なりにはありますが、殿下からははっきりとそういう感覚を受けて、できるだけ文章は変えない方がいいなと思いました。文章や言い回しにはその人自身が出ますよね。そう気づいてからは、原作からあまり削らないようにしているんです」

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