ユーザーのリアルな声
渡辺 最初のウィッグは人毛100%の高いものを選びました。でも、人毛って人の髪の毛だから、雨が降るとうねるし、枝毛もできるし、当然劣化もする。それに高額だから雑には扱えない。カットをしたくても高いから気軽には切れず、それが少し負担に感じてしまいました。そこで一度、安いものを使ってみようと思って1万円台のものを買ってみたんです。購入するときの絶対的なポイントは、頭頂部のところが皮膚っぽくなっているものさえ選べば安くてもいい、ということ。それともう一つ。ウィッグを買うのってどれを選べばいいのかすごく悩みますよね。とにかく何でもいいから少し長めのものを買えばいいんです。そのウィッグを、信頼している人に切ってもらうのが一番。私は幸い、この仕事のお陰でヘアメイクの方に切ってもらってますけど、自分が普段通っている美容院で相談をして切ってもらったらいいかと思います。洋服と同じで、ウィッグも着けているうちに馴染んできますよ。私はあまり髪型を変えたりはせず、毎回似た感じの長さにしているけど、ウィッグはいろいろ試せるからそこが嬉しい。とくに、白髪の人は染めるってすごく大変じゃないですか。
shuco そうなんですよね。保とうとすれば美容院も3週間に一回とか頻度も多いですし。
渡辺 「きれいな髪でいたい」っていう人にとって、白髪はものすごくストレスだと思う。だから、染めなきゃいけないタイミングがきたら少しウィッグ週間を設けて、染める頻度を減らすことができたら楽になる。
shuco そうですよね。うす毛や縮毛の人たちも。
渡辺 自分の髪の毛で努力することもいいことだと思う。だけどウィッグは、自分が一番なりたい髪の長さと色と質に近いものを「被れば叶う」から。もうちょっと気軽に使えるといいのにね。
shuco そうですね。でも、私が最初に話したパンフレットと一緒で、今も頑張って探さないと情報はあまり出てこないから、まだまだ知らない人が多いのかもしれないです。
理想がなければつくればいい
渡辺 インフルエンサーさんが「コラボでつくりました」みたいな発信を見かけることがあるけど、そういうのって大体若い子向けなんだよね。毛髪の悩みが真剣になってくる世代って40、50代じゃないですか。でも「大人ウィッグ」で検索すると、いきなりシニア世代の情報が出てくるし……。だから私が身につけた技は、買ったウィッグの元の形にはこだわらない。購入したら「カットで好きなスタイルに寄せる」というやり方です。
shuco なるほど。
渡辺 そんなことしなくても、元からそういう商品があったら嬉しいけど。
shuco ほんと、そうなんですよね。
渡辺 shucoさんがつくってよ!
shuco 次のビジョンが見えてきました!
渡辺 大人向けが足りないのよ。
shuco そういう大人向けのものが普段の美容院代で買えたらいいですよね。
渡辺 そうそう。ちなみに私のは2万円前後です。生々しい話だけど、3万円台はやっぱりちょっと高い。2万円台でウィッグがつくれたらいいよね。ショートに挑戦したいけど勇気がない人、金髪にしてみたいなって思っている人とかも、やりたかった髪型ができるんですよ。
shuco 私も今、短いウィッグを被りたくなりました(笑)。
渡辺 だけど今はまだ、みんなの選択肢の中に「ウィッグを被る」は、1ミリも入ってないんだよね。まだまだ手つかずだし、これからだね。
「ありのまま」より「なりたい自分」
shuco この本のコラムの中で「ルッキズム」についても書いているんですけど、やっぱりみんな「なりたい理想の髪」はあるかと思いますし、結局、私も髪の毛のある美しさの方が好きです。この本では、うす毛で悩んでいる人に「隠す」ためのテクニックも紹介しています。でも、それだけでは読者の方の理想に完全にこたえることは難しいかもしれません。ウィッグの魅力がもっと広く伝わって、選択肢の一つとして自然に受け入れられるようになってほしいですね。
渡辺 そうだね。
shuco 私自身、ありのままの自分を愛することはすごく大切だと思っています。でも同時に、無理に自分をさらけ出す必要はないとも感じていて。その意味でも、ウィッグの話はこの本の中でどうしても伝えたかったんです。
渡辺 ウィッグのことを知らないと、まず買おうとはならないもんね。やっぱり、まだまだ髪のうすい男性が使っているイメージが強いし。
shuco そう、男性のヅラがズレちゃっているとか、そういう昔のイメージがありますよね。
渡辺 そうそう。それに男性って、海外では髪がなくても「そのままの姿がかっこいい」とも言われている。でも、髪がある自分が好きっていう人もいるから「ヅラで隠すのがかっこ悪い」みたいな風潮もやめてほしい。
shuco そういう世間のイメージを変えたいです。
渡辺 隠したい人は隠していいし、それは全然おかしいことじゃない。でも仮に「髪がうすくても坊主でもかっこいい」と言われる世の中になったとしても、究極はやっぱり「自分がどうなりたいか」だよね。
(2025年10月31日収録)
» 後篇<サッと頭に乗せてなじませるだけ! 一日だけ「前髪あり」にしたり、目立ってきた白髪を手軽に隠せたり…“部分ウィッグ”が気になる!>を読む
渡辺 佳代子(わたなべ・かよこ)
1971年生まれ。1999年に女性誌『sweet』(宝島社)編集長に20代で抜擢され、同誌販売部数100万部超のNo.1雑誌へ成長させる。ブランド付録の文化を確立した先駆者。現在は編集長を務める『otonaMUSE』『otona SWEET』2誌の他、『sweet』『otona ROSY』を合わせた4媒体を統括。大人の女性に向けた新しい価値観を発信しつづけている。
shuco
へアスタイリスト・毛髪診断士。東京でのサロン勤務を経て渡仏。パリを拠点に主にヨーロッパのモードファッション業界でヘアスタイリストとして活躍。2015年より東京に拠点を移し、ヘアスタイリストとして活動する傍らで、毛髪診断士として髪と頭皮の健康にまつわる啓蒙や、ヘアドネーション活動にも力を入れている。また、ヘアアクセサリーブランド〈TRESSE〉をはじめ、複数のへア商品のプロデュースのほか、YouTubeでも情報を発信している。

わからない、髪のこと。
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