見たことのないイーキンの一面も投影

――これまでイーキンさんの楽曲のみならず、『インファナル・アフェア』など、さまざまな映画音楽も手掛けられてきたチャン・クォンウィンさん。ミュージシャン役を演じられたイーキンさんにアドバイスされたことは?

チャン・クォンウィン 私から具体的にアドバイスをしたというよりも、イーキンさんが私自身をモデルに、役作りの参考にしてくれました。たとえば、ピアノを弾くときの手の動き。劇中での彼の指使いは、ほとんど私そのものと言ってもいいかもしれません(笑)。さらに、一人のアーティストとしてスランプに陥ったとき、「曲が書けない!」ともがく瞬間の言動や感情の揺れも、丁寧に観察し、研究してくれました。創作がうまくいかないと、どうしてもイライラしてしまう。その繊細で厄介な感情まで、イーキンさんはリアルに演じ切ってくれたと思います。

――ジル監督から、この映画は「どんな新たなイーキン・チェンを見ることができる映画」になったと思いますか?

ジル・レオン 私はこれまで脚本家として、『ドラゴン×マッハ!』『イップ・マン継承』など、いろいろな作品に携わってきましたが、自分自身の思いも、劇中のキャラクターに強く投影してきました。初監督作となるこの映画ではクリエイターとしての“孤独”を描いたのですが、イーキンさんはそれを巧く演じてくれると信じていました。

 実際に会ったイーキンさんは、『欲望の街/古惑仔』シリーズで演じたチンピラとはまったく異なり、ピュアな心の持ち主で、天真爛漫。まるで、少年のまま成長したような人でした。この映画には、そんな見たことのないイーキンさんの一面も投影されていると思います。

次のページ ジル監督には感謝の言葉しかありません