【ベントレー】冨永 愛がSUVの真髄を味わう英国ドライブ旅 マンチェスターからクルーへ

最高峰の芸術が生まれる場所へ

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　車内に入ると漂う上質な革の香り、シートレザーの均一なステッチ、中を飾る木目の表情が豊かなヴェニアといった、精巧で艶やかなキャビンインテリア。“走る芸術作品”と言われ、英国王室をはじめとした世界のリュクスたちが愛してやまないベントレーの全車種が産声をあげる地が、クルーにあるファクトリーだ。

大型機械はたった2台 高い技術で紡がれる車

　マンチェスターから車で1時間ほど走ると、のどかな田園風景と民家が軒を連ねる小さな町、クルーに到着する。ベントレーの歴史を辿ると、1919年にロンドンで創業し、当初はレーシングカーを主に製造。ル・マン24時間耐久レースで好成績を収めるなどして世界的に名が知られるようになった。

　その後、時代とともにラインナップを変えながらレーシングカーの製造で培われてきた技術を生かし、走行性能が高いラグジュアリーカーの地位を確立していく。1946年に拠点をクルーに移し、今も変わらず技術者、職人たちによるクラフツマンシップが途切れることなく守られている。

　ファクトリーに備えてある大型機械はわずか2台。手作業をメインとしながら約4000人の従業員のチームワークによって車一台、一台が作られていると聞くと驚かされる。巨大なファクトリーは作業内容によってゾーニングされ、分野ごとのプロフェッショナルたちがものづくりに従事していた。

　内装の大切な要素であるヴェニア板は何枚かを繋ぎ合わせていくのだが、木目がぴたりと合うように結合させることが大事。これには高い技術が必要で熟練の数人の職人で行っているという。スピードや合理化が優先される時代に人の手によるプロセスに重きを置く贅沢さを感じることができる。

　現在、ベントレーが傘下に入っているフォルクスワーゲンのゴルフを作るのに約2時間なのに対し、ベントレーのハイクラスシリーズ、マリナーは100時間を要するという。工程の7割がビスポークで、自分だけの一台を作るというロマンに満ち溢れている。また、すべての車種においてボディーカラーは200種類ほどあり、イメージに合う色がなければ作り出す。

　かつてこんなエピソードがあった。あるプリンセスがその時に着ていたブルーのドレスと同じ色の車を作ってほしいとオーダー。その色は“シークエント（連続性の）ブルー”と名付けられ、ドレスと同色の車が誕生した。着ていくドレスに合わせて、乗る車を選ぶという究極にラグジュアリーな世界。そういったハイクラスのカスタマーの多くは、ベントレー車を移動するための道具ではなく、芸術作品として捉えているのだという。

　受注から完成までは約8カ月。途中経過を見にクルーを訪れ、愛車を観察し触り、素材や色を変更したいという要望があれば、応えてくれる。どこまでも顧客に寄り添い、最高峰の技術とマテリアルを集結させ、“作品”を生み出す。

　近年は車だけに留まらず、旅やライフスタイルへとフィールドを広げている。英国や北欧などで土地の文化を知るドライブ旅を企画するほか、イタリアの家具メーカーとのコラボレーションで「ベントレー・ホーム」を立ち上げ、エレガントな家具を供している。

　ベントレーブランドはクラフツマンシップを基盤に、時代の風を読み、軽やかに疾走していた。

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2025.04.11(金)
Edit, Styling & Text＝Mami Sekiya
Edit & Text＝Natsuko Umezaki
Photo＝TISCH（MARE_Inc）,model/Atsushi Hashimoto/landscape
Hair＝Yuuki Yanase
Make-up＝Tamayo Yamamoto
Special thanks to＝Bentley Motors Japan

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※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。