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 世界中の女性から憧れられる、“パリジェンヌ”というイメージが出来上がったのは19世紀末~20世紀初頭のベル・エポックの頃なのだそう。

 このたび、自然由来のビューティプロダクトで世界中の女性を虜にする「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」のブランドディレクター、ヴィクトワール・ドゥ・タイヤックさん監修の『美しくある秘訣』が上梓されました。ベル・エポック当時のパリジェンヌたちが毎日をどう過ごし、自分自身をどう慈しんでいたか……全8章からなる小説風の一冊は、単なるhow to本ではなく、哲学書のような趣も。

『三銃士』のポルトスのモデルになった人物の血を引く名門貴族出身で、生粋のパリジェンヌであるヴィクトワールさんに、この本を手がけることになった経緯や“パリジェンヌ”について伺いました。(全3回の1回目/続きを読む)


19世紀、美容本はベストセラーだった

――ヴィクトワールさんはどのような経緯でこの書籍を出版しようと思われたのでしょうか?

 19世紀の素敵な古書をたどると、昔のフランス語で“ビューティ”という話題について、真剣に書かれているものが多いんです。その姿勢はビュリーに通ずるものがあると思ったのがきっかけです。

 当時、これらの美容関連の書籍は今の自己啓発関連の本のようにベストセラーになるものが大変多かったのですが、残念ながらいずれも絶版に。

 私自身とビュリーの共同創設者で夫のラムダン、そしてビューティブランド、ビュリーの使命は「美に関する情報を皆様にお伝えすること」。19世紀当時の美意識をぜひ皆さんに知っていただきたいという思いから、この書籍を出版しました。

 ビュリーのお客様はとても好奇心旺盛な方が多いと感じているので、楽しんでいただけるのではと思っています。

――19世紀のフランスはどんな時代でしたか?

 この書籍のベースとなっている本が書かれたのは「ベル・エポック」と呼ばれる、1890年代から第一次世界大戦くらいまでの時期です。

 フランスがすごく華やかで平和で、誰もがクリエイティビティを自由に発揮できる、そんなハッピーな時代でした。そして、憧れのパリジェンヌ像というのが作られたのも、この時代です。

――なるほど。“パリジェンヌ”といえばコケティッシュでウイットに富み、美しくファッショナブル、かつ自分の足で大地を踏んで立つ女性というイメージですが、その頃の女性がそんな印象なのでしょうか?

 そうですね。ベル・エポックの頃に実際に活躍していた女優たちが、いわゆる“パリジェンヌ”というイメージを作りあげましたし、その姿に私たちは未だに憧れているんです(笑)。

――この書籍に出てくる“パリジェンヌ”は誰か実在の人物からインスピレーションを受けていますか?

 はい、実在のモデルがいます。たまたま、彼女の自伝と伝記を交互に読んでいたのですが、当時の大女優サラ・ベルナールです。

 若いときから亡くなるまでずっと演じ続け、すごくドラマティックな人生を送った人なんです。とてもフェミニンなのに、すごく力強くて、ダイナミックな女性という印象ですね。

2025.03.21(金)
文=前田美保
撮影=橋本 篤