この記事の連載
自分の魅力を引き出すために大切なこと
――確かに、いつも私たちが考える“美しさ”というのは時計を巻き戻すことばかりに注力している気がします。
私がとても共感している第2章では自分の魅力を引き出す秘訣について語っています。
ここでは、立ち居振る舞いや微笑みについて述べているのですが、いずれもカギは“セダクション”なんです。日本語にすると“誘惑”というちょっと策略的な言葉になってしまうのですが、パリジェンヌにとって“セダクション”とは、異性を惹きつけるというより、まず“自分で自分を好きになる”ことなんです。

そういった理由から自室のインテリアに加えて、自宅にいるときの装いにもこだわっています。
部屋着に対するパリジェンヌの面白い考え方があるので、簡単に紹介すると「いつも巧みに装い、欠点はいつも気まぐれに現れてきた姿であるかのように見せなくてはなりません」と書かれています。

本書ではパリジェンヌにはまるで1日48時間くらいあるんじゃないかと誤解してしまいそうなほど贅沢に時間を使っているように描かれていますが、それは化粧や身繕いに時間をかけましょうということではありません。
時々立ち止まって、自分を労ってあげられるゆっくりとした時間を持ちましょう――、そういうことなのです。
ヴィクトワール・ドゥ・タイヤック
「オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー」のブランドディレクター。人気セレクトショップのPRなどを務めたのち、2014年、夫であるラムダン・トゥアミ氏と共に1803年にパリで開店した総合美容専門店を復活させた。『三銃士』に登場するポルトスのモデルとなった人物の血を引くフランスの名門貴族出身で、美の歴史に深い知見を持つ。ビュリーは、アイテムだけでなく、店舗やパッケージにいたるまで洗練されたその世界観にも、日本をはじめ各国にファンが多い。
『美しくある秘訣』
ヴィクトワール・ドゥ・タイヤック監修
定価:6,380円(税込)
オフィシーヌ・ユニヴェルセル・ビュリー
https://buly1803.jp/products/l-art-d-etre-belle/

2025.03.21(金)
文=前田美保
撮影=橋本 篤