去る1月15日、第172回芥川賞の選考会が行われ、安堂ホセさんと鈴木結生さんの受賞が決まった。安堂さんは30歳、鈴木さんは23歳の若さだ。
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受賞作を発表・掲載する「文藝春秋」は選考会翌日、受賞者2人へにインタビュー。若い2人の読書歴が明らかになった。
2人の驚異的な読書歴
「DTOPIA」で受賞した安堂さんは、松浦理英子、多和田葉子、黒田夏子、川上未映子などの作品を10代の頃から愛読してきた一方、「ゲーテはすべてを言った」で受賞した23歳の鈴木さんは、小学2年生のときにキリスト教の洗礼を受け、聖書を読むことから読書の幅を広げていった。
インタビューでは、シェイクスピア、ジョイス、ボルヘスなどのヨーロッパ文学から夏目漱石、大江健三郎、丸谷才一などの日本文学まで、鈴木さんの驚異的な読書歴を明かした。
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小学生の時に『神曲』を読破していた
驚かされるのは、ダンテの『神曲』を小学生の時に読破していたことだ。
ダンテは13世紀から14世紀を生きたイタリアの詩人で、『神曲』はダンテが、古代ローマの詩人・ウェルギリウスに導かれ、地獄から煉獄をへめぐり、天国へと至る物語。世界文学屈指の古典とされる。
「これは決して格好をつけているわけではなくて、『神曲』はキリスト教の世界観ともろに地続きの作品ですからね。小学生なりに『これはかっこいいかもしれない』という予感はありましたが(笑)」と鈴木さんは朗らかに語る。
聖書は「The Book」と呼ばれ、ヨーロッパ世界の礎となり、数多の物語や小説、絵画、音楽などの源泉となってきた。『神曲』もまた然り。鈴木さんは10代のうちにヨーロッパ文学の源流を自らの血肉としていたことになる。
鈴木さんが計画する、“19世紀文学3部作”
そんな鈴木さんが「小説家になるなら、19世紀文学を理解しなければ」と思って書いたのが、デビュー作となった「人にはどれほどの本がいるか」。題名はトルストイの短編「人にはどれほどの土地がいるか」を踏まえたもので、鈴木さんがトルストイを読み込んで、ものした小説だ。芥川賞受賞作となった「ゲーテはすべてを言った」を書くにあたって鈴木さんは、ゲーテ全集を読破した。
そして何と今年発表予定の次作では、ディケンズをテーマにしているとのこと。
「この3作は、自分の中では19世紀文学3部作と位置付けています」と鈴木さんは語る。将来が楽しみな作家がまた一人出現した。
鈴木結生さんと安堂ホセさんのインタビューは、「文藝春秋」3月号(2月10日発売)及び、月刊文藝春秋のウェブメディア「文藝春秋PLUS」(2月9日公開)に掲載されている。
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2025.02.24(月)
文=「文藝春秋」編集部