「自分がやっていることは音楽でも何でもない」痛感したきっかけ
内田 音楽もずっとやっていらっしゃいますよね。
浅野 若い頃、音楽をやることで、俳優をやらせようとする父に反抗していたんですよ。もちろんバンドは楽しいですが、でもCharaと最初の結婚をしたとき、自分のやっているのは音楽でも何でもないと気づいた。今は息子(佐藤緋美・24)が音楽をやっていますから、もう息子がやればいいやと思うんですよ(笑)。
内田 確かに、緋美さんの音楽は、唯一無二ですよね。
浅野 緋美君、いつの間にそんなにできるようになっちゃったの? ちょっとお父さんに教えて、みたいな(笑)。
内田 浅野さんの創造の源は何だと思いますか。
浅野 答えになっていないかもしれませんが、アメリカ人の祖父の存在は大きいと思います。会ったこともない人の影響で髪が茶色いとか、目が茶色いとか、目立ちたくなくても目立つ。子ども心にも自分は何か常に発しているんだと思いました。それが表現するということに繫がったのだと思います。
表現する上で気をつけているのは、台本を読むときも、どこかで見た映画の登場人物が喋っているような話し方で読んでしまうことがある。それではつまらない。
内田 自分が捉えるその人というものを独自に見つけたいんですね。
浅野 だから原作や資料を読みたくないのかもしれません。殺し屋の役なのに「みんな自由でいいんだよ」という気持ちで演じたら伝わるのだろうか。これを実験してみたところ、「あなたのお芝居を見ていると、残酷なシーンなのになぜか自由な気持ちになった」というファンレターが届きました。
内田 伝わるんですね! 浅野さんは自由であるために内面を掘り下げるストイックな努力を重ねていらっしゃるということがよくわかりました。
浅野さんの結婚観についても伺いたいのですが、うちはディスカッションという名の喧嘩が絶えない夫婦なんですね。私は一緒に共鳴したいのに、あちらは違いを面白がりたい。お互いに自分の好みを変えたくないから、すごく難しいパートナーシップです。
母は「相手を替えても何も変わらない。自分が変わらなければ」と言いました。でも私は、パートナーが替わると私の人生も変わるのではないかと思うのですが、これは幻想なのでしょうか。べつに離婚したいわけではないのですが。
2025.01.17(金)
文=こみねあつこ
写真=平松市聖