今までになく重く描かれた「ちさまひ」の危機
――シリーズが進むにつれて、髙石さん演じる「ちさと」と伊澤さん演じる「まひろ」の関係性も深化しているように感じますが、演じていらっしゃるお2人から見てどうでしょうか。
髙石 変わってきてると思います。
伊澤 うん。
髙石 「1」では最初にちさととまひろは組織から「ルームシェアしてください」って言われて一緒に住むことになったんですけど、「え~」っていう感じでした。「2」ではかなり信頼関係が出来ていて、阪元(裕吾)監督は「(2は)ケガを負った2人が互いをかばい合うことで一つになる」のが「ちさまひ(ちさと・まひろ)」のテーマとおっしゃってました。
伊澤 それで「2」の舞台挨拶の時に、監督は「『3』のテーマは『1人じゃない』です」と言ってて。
髙石 今回、これまでになく生きるか死ぬかっていう危機に2人が直面します。ちさとから見たまひろの命の危機、まひろから見たちさとの命の危機。そこで「1人じゃない」というテーマがくっきりしてくる。
伊澤 うん。今までより死に近づいていた感覚があった。ギリギリでちさとが駆けつけてくれる時もしかり、池松さん演じる「冬村かえで」との戦闘中もしかり、自分たちの限界を超えて死に近づく(かえでを含めて)3人というのが、今までになく重く描かれているから、自分もすごい緊張感を持って撮影していたし、試写で見た時もすごいドキドキしました。
「まひろ、かっこいいじゃないですか」
――1人では敵わないかもしれない強大な敵に、ちさととまひろが2人で立ち向かうところにぐっときますね。『ベイビーわるきゅーれ』は、この種の映画としては女性のファンがとても多いような気がします。
髙石 確かにそうですね。
伊澤 私は確実に(女性のファンが)増えました。女性からすごく評判がいいというか。
髙石 だって、まひろ、かっこいいじゃないですか。みんな「惚れた」って言います。惚れちゃいますよね。
伊澤 ねえ。言ってくれてうれしいと思って。
髙石 今日はちょっとスカートなんか履いてますけど(笑)。
伊澤 えへへ。
髙石 素敵ですよね。たぶんそういうギャップにやられるんだと思うんですけど。
伊澤 女性もかなり熱量髙く推し活してくれてます。
髙石 まひろにすごく共感する部分があるって言ってくださる方も多いんです。まひろと同じように、人間関係うまくできないなとか、社会になじめないなとか思ってる人が、バーンってアクションシーンになった時に、そのギャップにキュンキュンしてしまう……キュンキュンってちょっと古いかな(笑)、でも私もキュンキュンしてるので。
伊澤 (笑)
――伊澤さんはどうですか。
伊澤 ……なんて言うんでしたっけ。シスターフッド? やっぱり私一人じゃ意味がないというか、女性2人がいて、その2人が戦うのがいいのかなと思います。今の社会って、戦いって物理的なものだけではないじゃないですか。精神的なものだったり、人間関係などでもみんなどこかしら戦っていることがあって。正直アクションで戦って見せることのほうがまだ簡単なのかもしれないです。
髙石 簡単ではないと思いますけど(笑)。
伊澤 形じゃないものと戦っている人には、まひろとちさとが2人で一緒に時間を過ごしながら何かに立ち向かっていくという姿が、どこか勇気をくれた、ちょっとした応援歌みたいな存在になれたのかなって。『ベビわる』を見た人からのお手紙を読むと、女性は特にちさととまひろに自分を重ねて見てくれてるのかなって感じます。
髙石 集団行動が苦手な2人なのに、「3」では前田敦子さん演じる「入鹿みなみ」たちと集団行動になってしまうんですけど、まひろはすごく拒否反応を示してました。「嫌です、嫌です」って。
伊澤 ちさとも入鹿と険悪になってたしね。
髙石 そうそう。ちさまひは2人がいちばんなので。
2024.09.24(火)
文=CREA編集部
写真=三宅史郎