チーフプロデューサーがディレクターの代理まで行うとは驚きだ。過密スケジュールの中、不屈の精神で撮影を続けてきたことがうかがえる。ちなみに福岡氏は過去に、『カーネーション』(2011年後期)、『純と愛』(2012年後期)、『ごちそうさん』(2013年後期)などの朝ドラに演出として携わっている。

「私が代理で演出したのはわずか4、5シーンですが、伝蔵(坂田聡)のおでん屋のシーンなども演出できて楽しかったです。助監督もやりましたし、何かあればなんでもやります」

脚本は「2人体制」で制作

 このように、通常の朝ドラに輪をかけてマルチタスクが要求された『ブギウギ』だが、クランクアップは2月10日(最終回放送日の48日前)と、朝ドラの中ではかなり優秀と言える撮影スケジュールだった。脚本を足立紳氏と櫻井剛氏の2人体制で制作したことも影響しているのだろうか。『ブギウギ』は全26週中、17週を足立氏が、9週を櫻井氏が担当している。

 

「ステージの準備と撮影に時間が必要でしたので、より物語を強くしながら台本を早く準備するために、お2人の脚本家にお願いするという形をとりました。お2人とも短いスケジュールの中、集中してくださって、グッと濃密な台本に仕上げてくださいました。足立さんと櫻井さんのお人柄も相まってのことだと思いますが、いい意味で境目がわからないぐらい、なめらかなリレーが実現できたかなと感じています。なおかつ、お2人それぞれの『足立節』と『櫻井節』をとてもよく出していただいて。お互いに刺激を与え合って、より良いものを産み出していただいたという印象があります」

 2人の脚本家が書いていながら、『ブギウギ』には「キャラクターのぶれ」が一切感じられなかった。足立氏、櫻井氏を含めたスタッフによる人物のイメージ共有がしっかり行われていたということだろう。主人公・福来スズ子という人物を造形していくうえで、いちばん大事にしたことは何だったのか。

2024.03.30(土)
文=佐野華英