高頭 初参加になります、丸善丸の内本店の高頭です。東京駅の目の前にある土地柄、インバウンドのお客さまが増えてきました。この秋はすごく文芸書が売れましたね。10月、11月に集中的に話題書が出版されるものですから、品出しをする身としては「どうして同時期に出したの!?」と思いつつも、これだけ沢山小説を買っていただけたのはとても嬉しいことだなと感じています。

 川俣 紀伊國屋書店横浜店の川俣です。加藤さんもおっしゃっていた通り、神奈川県内の売り上げは依然として厳しくて、なかなか完全には客足が戻らない状況です。あまり気にしすぎていてもしょうがないので、やるべきことをやろうと、担当の文芸書のほか、雑誌やコミックにも手を出しています(笑)。今日はよろしくお願いします。

 山本 大盛堂書店は渋谷のスクランブル交差点に店舗があるもので、インバウンドの勢いを肌で感じています。外国からのお客様で『ドラえもん』や『呪術廻戦』の第一巻をおみやげに買っていかれる方も多くいらっしゃるんですよ。文芸で言うと、やはり10月、11月がすごかった。前年比200%に迫る売り上げになりました。良い小説が出ると売れるのだな、ということを再認識できました。

 ――ありがとうございます。第3回「大人の恋愛小説大賞」候補作は、瀧井朝世さん、吉田大助さん、吉田伸子さんの推薦をもとに、全五作を選びました。バラエティ豊かな作品について、一作ずつお話を伺ってまいります。

『愛されてんだと自覚しな』河野裕

 ――主人公の岡田杏(おかだあん)は、1000年前、愛する男とともに神に呪いをかけられて以来、転生をくり返しています。呪いには条件があり、〈男は生まれ変わるたびに輪廻を忘れ、しかし女の生まれ変わりを愛したとたんにそれを思い出す。女は逆さで、輪廻を覚えたまま生まれ変わり、しかし男の生まれ変わりを愛したとたんにそれを忘れる〉。このルールの元で、何度も運命の相手と出会っては別れてきました。長きに渡る転生の記憶を持つ杏が欲しいもの、それは法外な値でやりとりされている古書「徒名草文通録(あだなぐさぶんつうろく)」。この稀覯(きこう)本を手に入れるため、ルームメイトの盗み屋・祥子(しょうこ)の協力を得ながら、神々をも巻き込み奮闘するのですが……。

2024.03.28(木)