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くるりの映画を撮るなら、やっぱり曲を作るところ

──『NO SMOKING』は細野さんご本人のインタビューシーンや、星野源さんによるナレーションが入ってくる構成でしたが、今回の『くるりのえいが』はナレーションもなく、インタビューも少なめ。シンプルにニューアルバム『感覚は道標』のレコーディングを追っていく構成ですね。

佐渡 『NO SMOKING』は細野さんの音楽活動50周年を記念した映画で、“細野さんの足跡”というテーマがありましたから。今回はくるりの皆さんから最初に「曲を作るところを撮ってもらいたい」というお話があったので、そこに特化しました。インタビューに関しては、皆さん撮ってる最中にいろんな会話をなさるから「あ、これで構成できるかな」と思って。だからインタビューは当初の予定よりもだいぶ少なくなってます。

岸田 くるりの映画として何を撮るかとなったときに、ライブの映画ってありますけど、ライブってよく映像でも出すし、生で観に行ったら一番いいし。これは誤解を生むかもしれないですけど、ライブ自体も、純粋な生じゃなくて、何かを通した疑似体験でもあると思うんですよね。

 僕らが出した音はスピーカーから鳴るし、普段と違う格好して演奏してるし、ちょっと加工されて出ていってるというか……特に会場が大きければ大きいほど、素の状態ではないと思うんですね。編集が入ったライブDVDとかも、僕にとってはそれに近い感覚で。それでも面白いから、誰かのライブ映像を観ることもたまにあるんですけども。かと言ってドラマ仕立てで作られたバンドもんのドキュメンタリーって、ちょっと盛り上げるにはゴシップ的な感覚が入ってくるというか……。

──メンバー同士の喧嘩のシーンとか?

岸田 そうそう。舞台裏っていろいろあるけれども、みんなが想像する舞台裏をどうやって演出するか、みたいな方向に想像力が働いてしまうというか。そういうのじゃないもので、皆さんが観たことのないものを、と考えると……まあ家で鼻くそをほじってるか、バンドで曲を作ってるかぐらいしか残ってないので(笑)。

森 信行(Dr) あはははは!(笑)

岸田 鼻くその映画を観てもらっても仕方がないから、やっぱり本気で曲を作ってるところがいいんじゃないかなって。

2023.10.12(木)
文=石橋果奈
写真=深野未季