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自然と共に生きる母の姿は、まさにナウシカ

――エッセイにはお母様とのエピソードがいくつか出てきます。個人的に印象に残ったのは、ダイニングルームに巣を作ったツバメとのエピソードでした。

田中 かなり強烈ですよね。ツバメは普通、軒先に巣を作るんですけど、それだとヘビに卵を食べられちゃうからか、ある日、家のダイニングルームに巣を作ったんです。母はツバメの巣を見守ろうと決めて、窓を開けたり閉めたり世話をして。フン除けに家族で帽子をかぶって食事をしたこともあるんですよ。

 母は自然が好きで、たとえるなら『風の谷のナウシカ』のナウシカみたいな人でした。「蟲と共に生きる」みたいな。

――その名の通り、虫が出ても殺さないタイプの方なんですか?

田中 殺さないですね。ムカデが出ても、つまんで外に出していましたから。

 俺の実家は山の上にあって、自然と同化しているみたいな家なんです。庭先にヘビが出ることもあるんですよ。母はそのヘビに、買ってきたニワトリの卵をあげてましたね。野鳥も好きで、牛乳パックで作った巣箱を庭の木に取り付けたりしていました。俺が40歳の頃、庭の木に8メートルくらい登って付けたんですけど。

――大木ですね。巣箱に鳥は来たんですか?

田中 この間帰った時は、来てなかったかな。巣箱に鳥を来させるのって難しいらしくて、天敵となるほかの生き物が入れないサイズの穴じゃなきゃいけないらしいですね。だから穴の大きさが良くなかったんじゃないかな。

2023.09.23(土)
文=ゆきどっぐ
撮影=山元茂樹