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相容れない二人の関係性が、優しくて美しい

――今作の監督を務めた内田(英治)さんとは、いつか一緒にお仕事したいと思っていたそうですね。

 内田監督の「ミッドナイトスワン」を見た時は本当に心が震えました。草彅さん演じるトランスジェンダーの主人公と、親の愛情を知らない少女の擬似親子的な関係を描いた作品なのですが、相容れない2人が出会った時の化学反応を本当に優しく撮る方だなと感じたんです。

――相容れない2人ではあるけれど、過去にトラウマを抱えている点は今作と似ているところもありますね。

 私も今回のお話をいただいた時に、湊さんが描く女性2人と「ミッドナイトスワン」の2人の関係性が似ているなと思いました。どちらも狭い世界の中での思いやりを描いたお話で、心の奥底で繋がっている繊細さや、戦いながらも前を向いていたいという思いを捨てない姿が美しいなと思ったんです。きっと内田監督は「落日」でもそこを丁寧に描かれるだろうなと思いとても楽しみでした。

――北川景子さんとは今回が初共演ですが、現場ではどのようなお話をされたのですか。

 本当に美しすぎてドキドキしていたのですが、北川さんから気さくに話しかけてくださって、ちょっとした悩み相談もしたりして、とても優しく接していただきました。よく北川さんから「真面目」って言われていたんですよ。私は最初、それが良いことなのか悪いことなのか分からなかったんですけど、ある時「私は里帆ちゃんの真面目なところがすごく好きだし、信頼できる」と仰ってくださったんです。北川さんがそう言ってくれるならこのままでいよう、と自信が持てたし、救われました。

言いたくなかった過去を初めて人に見抜かれた瞬間の怖さ

――過去の出来事により、鬱屈としてしまった真尋を演じるのは苦しかったこともあったかと思います。特に印象に残っているシーンは?

 今回のドラマでは、香の方が何か抱えているんだろうなと感じるような構図ですが、実は真尋もその裏でものすごい過去を持っていたということが後々分かってきて、そこを初めて香に見抜かれる瞬間があるんです。香は監督という職業もあってか、相手の心の状態を敏感に察するし、どんどん質問をしてきて「どういう状況だったの?」「あの時はどう思っていたの?」と詰められた時に、真尋は本当は答えたくなかったのに答えてしまう、もう諦めたように自分の話をするシーンはすごく緊張しましたし、怖いなと感じました。

――その時、吉岡さんにはどんな感情が沸きましたか。

 限られた撮影時間の中で、真尋の感情を1番のピークまで持っていくことが本当に難しかったです。子供の時のトラウマを大人になってから話すというのは、それまで溜め込んできた時間や思いをイマジネーションしていく作業なので、私も苦しかったですね。「人がずっと隠してきたものを吐露する時ってどういう感じなんだろう」とずっと考えていたので、演者として研究しがいのあるシーンでした。

2023.09.07(木)
文=根津香菜子
撮影=杉山拓也
ヘアメイク=北原 果(KiKi inc.)
スタイリスト=安藤真由美(スーパーコンチネンタル)