だから、僕には無理だなと思う曲はだいぶ増えました。でもね、今の子どもたちが、番組でそういう歌を聴いて「歌いたい、踊ってみたい!」と思えば、それは成功だと思う。
時代に合わせて『おかあさんといっしょ』も変わる
──『おかあさんといっしょ』は、「子どもによいものを届ける、品行方正な番組」で、変化は少ないのかなと思っていました。でも、時代に合わせて変わっているんですね。
坂田 もちろん、よいものを届けるというポリシーはそのままだと思いますよ。でも『おかあさんといっしょ』はわりと、日本社会の潮流の変化を反映しているんです。
子ども向けの番組は今もたくさんあるけれど、あの番組はスタジオに子どもたちが来るでしょう。
──はい。あの子たちは子役とかじゃなく、普通の子どもなんですよね?
坂田 そう、本当に番組に応募してきた子たち。そういう普通の子が出る番組が、60年以上続いてるんです。
ただ、子どもと歌は日々入れ替わるので、「社会が少しずつ変わってきた」というのが、子どもたちの服装や歌のジャンル、歌詞などを通して伝わるんですよね。そこが、あの番組のいいところでもあります。
病気も違和感も「受け入れて、一緒に走る」
──変化といえば、坂田さんが《うたのおにいさん》になって、約40年が経ちました。当時と70歳の今、心身の変化はいかがですか。
坂田 そりゃもう、見た目はシワが増えたなとか。あとは、目にくるね。でかいコンサートには必ずバミリ(立ち位置の目印用テープ)があるんだけど、それがよく見えないし。朝も早いよ。4時か5時には目が覚めて、夜も何回か起きちゃう。こういうのはやっぱり、加齢ですね。
──そういう変化には、抗っていますか。
坂田 いや、受け入れてますよ。あとね、子どもと一緒にいれば、大丈夫。
子ども向けのステージはだいたい60~70分ぐらいだけど、直前にちょっと体調が悪くても、ヤバいと思ったことはないですね。それはやっぱり、子どもといるからなのよ。
2023.08.10(木)
文=前島環夏