スマホでオーサカクレオパトラのネタを見る能町さん。

 この際なので私が面白かった3回戦や準々決勝のネタをどんどん挙げます。3回戦が楽しめたら来年以降も楽しみが増えちゃうんで、もう離れられない。

・セルライトスパ

 ずっと好きですね〜。大須賀さんがR-1ぐらんぷりで準優勝してて、それももちろんおもしろいんですけど、私は漫才が好きなんですよね。2人ともボケができちゃうしネタの種類もめちゃくちゃ多い。準々決勝ネタ、ヤバいです。私は今年の準々決勝のなかでいちばん笑ったかもしれない。

・ぱーてぃーちゃん

 もう有名で説明するまでもないかもしれないけど、ギャル2人とチャラ男のトリオですね。キャラ重視に見えるけどちゃんと腕がある……とかいうと偉そうですけど。ギャルのきょんちぃは、「千原ジュニアの座王」(関西テレビ系)でめっちゃ強くて注目されてたりもするみたい。この見た目なのに、ふつうに寄席で見たいレベルで安定的におもしろい!って感動しちゃう。(3回戦)

・忘れる。

 もうそろそろバッと世に出そうな気がします。ずーっと同じことを繰り返すネタが多くて、これも「漫才か漫才じゃないか論争」に巻き込まれそう(笑)。今年は準々決勝まで行ってましたね。見た目も、特別変わってるわけじゃないのに、な〜んかおもしろい。出てくるだけでなんかちょっと変でおもしろい。

・TCクラクション

 ネタのアイデアが毎回秀逸なんですよね〜。3回戦、ものすごく面白かったから、この勢いだと決勝に行くかもって期待してました。左側の古家さんはかつてピン芸人「曇天三男坊」としてゴッドタンに出てちょっとだけ注目されたけど、その後あんまり出られてなかったので、違う形で世に出そうなのでうれしいです。もう親心的な感じ。

・ひつじねいり

 ひょろっとした関東の人(細田さん)がカチンと来るボケをして、もっさりした関西の人(松村さん)がやかましくつっこむっていう、キャラが立っててめちゃめちゃ見やすくて楽しい漫才で、1回戦動画を見た時点で今年一推しって思ってました。残念ながら準々決勝敗退だったんですけど。

・ちゃんぴおんず

 東京のある日の3回戦のトップバッターだったんですけど、トップバッターとしてこんなにぴったりなコンビはいなかったです。トップバッターって賞レース的にはすごく不利なのに、まるで前座のようにしっかり会場を沸かせて、盛り上げるだけ盛りあげて、楽しかったしなんか感動しちゃいました。でも敗退しちゃったからちょっとかわいそう……。

・ワールドヲーター

 3回戦は「漫才か漫才じゃないか」なんて言ってられないほど多様なネタが見られるんですけど、オタク4人組という設定のこの人たちもいいんですよね〜。色モノっぽいのに完成度が高くて。あと、オタクだというのもたぶん噓じゃないから、そこもいいです(笑)。(3回戦)

・阿佐ヶ谷姉妹

 SNSでも「仕上がってる」ってずいぶん話題になってましたよね。3回戦が特にインパクト強かったなあ。阿佐ヶ谷姉妹にしかできないネタって感じで最高です。

・かもめんたる

 無料動画はないんですけど、準決勝のネタが最高です。敗者復活戦でもう一回見たいくらい。キングオブコントでも優勝してるし、圧倒的にコントのコンビだったはずなのに、いわゆる「コント漫才」じゃなくてちゃんとしゃべくり漫才で、う大さんのちょっと怖いキャラが前面に出ていて最高です。2007年結成だから今年がラストイヤーみたいですけど、ふつうに漫才でもネタ番組にどんどん出てほしいです。

 準決勝には、友達がチケットをとってくれて、数年前に一度だけ見に行けたことがあって。準決勝を生で見た後なんてすごく気持ちがホクホクしてるので、そのまま帰れないわけです。ご飯を食べながら感想戦しようとなって、でも、夜中の浜松町を歩いてもモスバーガーしかなかったからそこに入ったんですね。そしたら私たち以外にお客さんは3人しかいなくて。私たちがテンション高くM-1の話をしていたら、少し離れたところの男性2人組も明らかにM-1の話をしてたんですよね。うわー、さっきいっしょに見た仲間だ、と思って、よっぽど「一緒に話そう!」と話しかけたくなったんですけどさすがにできず。ほかに、女性の一人客もいたから、なんかやかましくしてて悪いなと思ったりして。

 で、帰りにまだテンションが収まらず、「M-1 準決勝」とTwitter検索して知らない人の感想を見たりしていたら、「M-1準決勝を一人で観たあとご飯食べてたら、明らかに同じ店の他の二組も準決勝を見に来てた人たちで、話しかけようかと思った」って書いてる人がいたんですよ!その一人客も見てた人だったんです(笑)。もうみんなで話せば良かったじゃん!って。

 なんか、そうなっちゃうんですよ、M-1って。見た人みんなと話したくなる。芸人さんに対して「あいつはダメだ」みたいなネガティブな話じゃなければ、みんな仲良くできるはず。ある程度の研ぎ澄まされたフォーマットの中で、毎年面白い「作品」に出会えて、ホクホクした気持ちにさせてくれるのがM-1なんです。他のコンテストとは違う、ちょっと特別です。

能町みね子(のうまち・みねこ)

1979年生まれ。エッセイスト、イラストレーター。著書に『私みたいな者に飼われて猫は幸せなんだろうか?』(東京ニュース通信社)、『皆様、関係者の皆様』(文春文庫)など。執筆活動に加え、『久保みねヒャダこじらせナイト』(フジテレビ)など、テレビやラジオでも活躍している。ツイッター:@nmcmnc

Column

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ゲストの方に気になる話題を語っていただくインタビューコーナーです。

(タイトルイラスト=STOMACHACHE.)

2022.12.15(木)
文=ライフスタイル出版部
撮影=佐藤 亘