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ショコラとフォワグラ、トリュフから生まれる味の大地

 もうひとつのスペシャリテである「ショコラ・ロワイヤル」は、そのエンメらしさを象徴するひと皿です。フルーティなビターチョコレートを使ったガトー・ショコラと、クリーミーなフォワグラのクレーム・ブリュレ、トリュフをぜいたくに使ったバニラアイスクリームが芳醇で奥行きあるハーモニーを奏で、赤ワインとベリーのソースがアクセント。

 目の前で周りに注がれた温かいショコラ・ショーによって、すべての香りがひときわ豊かに、ドラマティックに花開きます。「フォワグラは赤ワインと相性が良いですし、甘いものやチョコレートともよく合います。ただ、動物性の食べ物ではあるので、主張しすぎないよう気を付けながらバランスを取りました。濃厚そうに見えますが、意外にもすっと食べられるかと思います」と、延命寺さん。

 大地をイメージして土に見立てたチョコレートのクランブルを散りばめ、ピリッと辛みのあるペッパークレスをあしらったプレゼンテーションにもストーリーが感じられ、心惹かれます。

口の中で花が咲く、トロピカルな夏のデザート

 また、夏のデザートとして提供されていた「パッションスフレとアニスのソルベ」では、熱々の甘酸っぱいパッションフルーツのスフレに、パプリカの冷たいポタージュと、アニス(八角)が香るミルクソルベをマッチング。上にはアニスの香りをまとわせたカカオ風味のシガレットとパッションフルーツの果肉、マリーゴールドの花びらがあしらわれています。

 口の中で熱々とひんやりが出合い、さまざまな食感や香り、味が混じり合って、驚きいっぱい、楽しさいっぱい。少しクセのあるパプリカの青みを帯びた香りが、トロピカルで酸味あふれるパッションフルーツに深みを与え、時折現れるアニスのエキゾチックな香りが魅力的なひと品です。

 「メニューは毎月1~3皿変わります。デザートの魅力は、ひと皿でいろんな素材を使ってストーリーをつくれるところ。そして何より、一番おいしい瞬間を食べてもらえるところだと思います。お客様の目の前でデザートを完成させて、お客様の反応を目の前で見られることがすごく好き」と話す、延命寺さん。満足感がありながらも重すぎず、またすぐ食べたくなる延命寺さんのデザートは、多くのファンの心をつかんでいます。

EMMÉ(エンメ)

所在地 東京都渋谷区渋谷 2-3-19 ローゼ青山1
電話番号 03-6452-6167
営業時間 ランチ 12:00~16:00(15:30 L.O.)、ディナー 17:00~翌1:00(23:30 L.O.)
定休日 火曜(祝日の場合は営業)
https://www.emme-wine.com/

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2022.09.29(木)
文=瀬戸理恵子
写真=鈴木七絵