数あるキャラからスシトレインが選ばれた理由

――ところで、ものすごい数のグラニフのオリジナルキャラクターの中で「スシトレイン」を最初の絵本に選んだ理由を教えてください。

 まず、人気のあるキャラクターであること。「ビューティフルシャドー」や「コントロールベア」など人気キャラクターは他にも多くありますが、「スシトレイン」はトレイン(電車)というだけあって動きがイメージできたり、個性豊かなキャラクターが多く、ストーリー性を感じました。

 何より、絵本というフォーマットを前提としたときに、お子さんと親御さんが一緒に楽しく読んでいる姿がすぐに目に浮かびました。そんな観点から採用しました。

――そもそも「スシトレイン」は、どういった経緯で誕生したキャラクターですか?

 弊社所属のグラフィックデザイナー「たいっちゃん」がデザインしたキャラクターですが、彼は大のお寿司好きで。ミニカーを見ているうちに、それがお寿司の形に見えてきたそうです(笑)。

 そんなインスピレーションをきっかけに10年前に誕生しました。シンプルでわかりやすく、複雑にせずというところがデザイン的なポイントです。

 ちなみに「たいっちゃん」の好きな寿司ネタは海老。実は、よく見ると海老だけ特別なデザインになっているんです。

――(笑)。そんな風に思わず笑みが溢れる仕掛けというか、作風がすごくグラニフらしいと思いました。オリジナルキャラクター以外にも、ブランドやアーティストとのコラボも話題ですが、御社がコラボするにあたっての基準はありますか?

 独自な世界観を持ってクリエーションをされていること。その上で、ユニークなコラボレーションができるかどうかが一番重要と考えています。

 単純に人気の作家さんの絵をペタッと貼り付けて商品化する、ということはしたくない。

 作家さんが生み出す作品の世界観をグラニフの解釈で、様々な視点から感じられるものに仕上げる、そういった取り組みにご理解いただける方々とコラボレーションをさせていただいております。

 そうすることで、それを見たお客様に「この作品はこういう解釈もあるんだ!」という広がりを感じていただける。作家さんにも「自分の作品はこういう切り口での展開もありなんだな」と発見していただける。

 いい部分を引き出しあって新しいクリエーションを生み、みんなが納得できる、そういうものづくりを目指しています。

 お客様から「グラニフ、わかっているな!」、「私もこのシーンが好き!」、「まさかこうきたか!」や「益々その作家さんのファンになった」というご感想をいただくことも多く、それがとっても嬉しくて。そういうお声を耳にしたときに、これこそが理想のコラボレーションだと感じます。

2022.07.29(金)
文=天野真由美
撮影=深野未季